麻生氏、海自潜水艦に体験搭乗 首相・閣僚5年事例なし
2019年12月3日 朝刊
https://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201912/CK2019120302000143.htm

 麻生太郎副総理兼財務相が今年五月、海上自衛隊の潜水艦「うずしお」に搭乗し、一日がかりの潜水航行を体験していたことが分かった。体験搭乗は麻生氏側の要望で行われ、実施日は部隊の休日に当たる土曜日だった。少なくとも過去五年間に防衛相を含め、航行を伴う潜水艦体験搭乗をした首相、閣僚はいない。
 防衛省によると、麻生氏は五月十八日午前、神奈川県横須賀市の米海軍横須賀基地内にある海上自衛隊第二潜水隊群所属のうずしおに乗艦。同艦は基地を出航した後、相模湾で潜水し、同日夕に同基地へ戻った。
 海上幕僚監部広報室は本紙の取材に、体験搭乗が行われた経緯について「麻生大臣の希望」と回答。部隊の休日に実施することは財務・防衛両省の調整で決まったという。うずしおの乗員約七十人のうち出勤した乗員数や、かかった燃料費について回答はなかった。
 麻生氏がどのような立場で体験搭乗したのかという問いには「現職の副総理・財務大臣であるとともに元総理の立場にある方の視察として対応した」と答え、重鎮の政治家として特別扱いしたことをうかがわせた。広報室によると、首相や閣僚、元首相、元閣僚による潜水艦の体験搭乗は少なくとも過去五年間確認できず、それ以前は文書が残っていないという。
 体験搭乗には国家安全保障局と財務省職員が同行した。本紙は同局全職員の出張に関わる資料を情報公開請求。開示文書から同行者の一人は山田重夫内閣審議官(当時、現外務省総合外交政策局長)と判明した。山田氏の出張命令簿には午前七時半〜午後四時四十五分に第二潜水隊群潜水艦を視察する行程が記されていた。
 麻生氏の事務所に搭乗を希望した理由などを質問したところ、「さまざまな現場を視察させていただくことは常々ありますが、今回の搭乗は海上自衛隊の実情に触れるという面でも意義があったと考えております」と文書で回答があった。
 麻生氏は第二次安倍政権以降に行われた陸海空自衛隊持ち回りの観閲式のうち、二〇一五年にあった海自観閲式(観艦式)にのみ出席、一三年にあった護衛艦「いずも」の命名進水式にも出席している。 (編集委員・半田滋)
◆私物化したのでは
<飯島滋明名古屋学院大教授(憲法学・平和学)の話> そもそも麻生氏が潜水艦に乗る理由がなく、趣味で乗ったとしか考えられない。「桜を見る会」が政治家による国の行事の私物化ならば、麻生氏の場合は自衛隊という組織を私物化したのではないか。自衛隊は任務が重なり、へとへとの状態。そこに上乗せして政治家のつきあいまでさせられる。自衛隊のことを考えた行動とは到底思えない。