県博物館(関市小屋名)は今月18日、所有者から借り受けて展示を始めるとともに、東大大学院にDNA解析を依頼した。来年3月ごろ結果が出る見通し。
カワウソは明治期に乱獲され、県内では昭和初期に絶滅したとみられている。国内では2012年にニホンカワウソの絶滅が宣言され、17年に長崎県の対馬で見つかったものはユーラシアカワウソと判定された。
環境省レッドリストでは、ニホンカワウソは、大陸由来の「ユーラシア」の亜種の位置付け。127万年前に渡ってきたものが独自の進化を遂げたと推定されており、頭骨の形に差異がある。
だが、1915年に神奈川県城ケ島で捕獲された標本は、DNA解析で「ユーラシア」と判明した。遠洋漁業で持ち込まれた可能性も残されており、本州に分布した種がニホンかユーラシアかを見極めるため、本州での新たな標本が待ち望まれていた。
見つかった剥製は長い尾を含め長さ1メートル超。内臓や骨は失われているが、焦げ茶色の毛皮や鋭い爪のある4本の短い脚、目の痕や耳、ひげが残る。所有者の男性は「以前は資料館に、その後は民宿のいろりの間にケースに入れて飾ってあり、父親は『神岡(飛騨市)に向かう高原川の辺りで捕ったもの』と説明していた。祖父の代からあったのではないか」と話す。
18日から展示を始めた県博物館は、取りあえず説明書きに「ユーラシアカワウソ」と記載。脚の肉球の組織を解析に出しており、結果次第で変更する。
8年越しの交渉で借り受けた同館の説田健一学芸員は「日本のこれまでのカワウソ研究は四国の標本に基づいてきた。分析次第では、研究に一石を投じるかもしれない」としている。
解析を担当する東大大学院生物科学専攻ゲノム人類学研究室の和久大介特任研究員(野生動物学)は「本州に標本はほとんど残っておらず、非常に貴重。(位置的に)高知と神奈川のどちらの系統に近いと出てもおかしくなく、(進化や分化の過程を示す)系統樹のどこに位置付けられるかを明らかにしたい」と話している。
高原川で捕まえられたとされ、民宿に残されていたカワウソの剥製=28日、関市小屋名、県博物館
https://www.gifu-np.co.jp/news/images/20191230082317-3466c478.jpg
2019年12月30日 08:21 岐阜新聞
https://www.gifu-np.co.jp/news/20191230/20191230-203515.html