欧米諸国で急速な広がり見せている新型コロナウイルス。それと比例するかのように流れる大量の情報が、人々を混乱させている。
 
 先週末には、フランスのオリヴィエ・ヴェラン厚生大臣の「感染者が(イブプロフェン、コルチゾンなどの)抗炎症薬を服用すると感染を悪化させる要因になる可能性がある。熱がある場合は、アセトアミノフェンを服用してください」というツイートに疑問の声が上がり、ウィーン大学がこの内容を否定、ドイツ連邦保健省も“情報はフェイクだ”と注意喚起している。

 渡航医学が専門の勝田吉彰・関西福祉大学教授は「大臣がこうした発言をする場合、半日くらい前には私たちのところに論文が入ってくるものだが、今回、イブプロフェンを服用することによって新型コロナウイルスが増えるとか感染が激しくなるとか、あるいは感染しやすくなるというような論文は今までに一度も見たことがなかったので、最初に見た時に、“あれっ?”と思った。そのうちにウィーン大学が“そんなことは絶対にない”という内容をツイートしたので、これはどこかでフェイクニュースが流れているなと思った」と話す。

 「ここからは推測だが、確かにインフルエンザに感染したときにイブプロフェンを解熱剤として服用するとあまり良くないので、アセトアミノフェンを服用しようという、大臣のツイートの後半と同じ話はある。ただし、ウイルスを元気にするということではなく、イブプロフェン、ジクロフェンがインフルエンザ脳炎を促進してしまう可能性が少し高くなるという理由からだった。このあたりの話で混乱が起きたのではないか」。

 さらに日本でも、アメリカの研究機関などが「新型コロナウイルスが空気感染する」と、これまでの認識とは異なる発表をしたとの記事(『JBpress』が14日に掲載した「ついに証明された、新型コロナウイルスは空気感染する」)が一時ネット上で拡散した。

 しかし、論文が掲載されたのは「ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン」誌ではなく「メド・アーカイブ」というサイトに掲載された予稿だったこと、「エアロゾル伝播」と表現すべきところで「空気感染という言葉を使ったことで、掲載サイトと筆者が謝罪、記事は取り下げられた。

 この記事について、勝田教授は「世の中の多くの人が誤解していることを、記者も誤解していたということだろう。エアロゾルとは、水分に乗ってバッと空中に舞うことだ。一方、空気感染は、水分や飛沫に囲まれていない状態だ。その上で、今回のコロナウイルスやインフルエンザは、水分の中身の芯だけで悪さをすることはできない。だから車両の端から端まで飛んでいくということもできない。それができるのは麻疹のウイルスや結核菌などだ。もし、今まで空気感染とエアロゾルが同じだと思っていたという人は、理解を修正して頂ければ」と説明。

 また、記事が引用した論文に「生きたコロナウイルスはエアロゾル化後、3時間まで生存することを突き止めた。銅(製物質)の表面では4時間、段ボール上では24時間、プラスチックやステンレス・スチールの上では2、3日の間、同ウイルスは生存している」という記述もあったということについては、「物質の表面にウイルスが何時間いるかということについての研究は色々と出ていて、それらの論文と比べても特に逸脱していない、妥当な数字だと思う。ここから得られる教訓は、物質の表面に飛沫と一緒についたものを消毒したり、掃除したりしないままでいると、違う人が触って、目・鼻・口から感染してしまう可能性がある、ということだ。水拭きでもウイルス量を減らすことは可能なので、丁寧にやればリスクを下げることになる」と話していた。

 幻冬舎の編集者・箕輪厚介氏は「SNSがあることによって、誤った情報については反論もできる。真偽が判断できない僕たち一般人からは、飛びつきすぎず、推移を見ながら冷静に見ていくという態度を取るしかない。しかし、新型インフルエンザの話はお金持ちも貧乏な人も、老若男女、誰でもが発言できてしまうテーマなので、メディア的なものと悪い意味で相性が良すぎる。だからメディアの人も、どういう切り取り方、角度でやればセンセーショナルになるかと考え、無意識に煽ってしまっている部分があると思う。新聞やテレビが“オワコン”と言われている時代だからこそ、信頼を取り戻すチャンスだ」と指摘していた。(AbemaTV/『AbemaPrime』より)

3/17(火) 14:30配信
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20200317-00010018-abema-soci
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