新型コロナウイルスの感染防止にまったく取り組む姿勢を見せていない中米ニカラグア(人口600万人)の対応に、専門家が警鐘を鳴らしている。

 今週末に「ホーリーウイーク」という国民の休日を控えているニカラグアでは、国民に対して「積極的に祭りなどのイベントに参加するように」という通達が出され、医師に対しては「マスクをつけたり消毒液で手を洗ったりすることを勧めるな」という圧力をかけていたことが判明。感染への不安から学校を休む生徒に対しては「欠席したら退学にする」と脅す校長の存在も明らかになるなど、その異様なまでの“反・感染対策”が注目を集めている。

 野球で国内トップリーグの強打者として活躍していた21歳のロビン・ゼレドンは「感染が怖いのでプレーしたくない」と語ったが、その翌日となる3月26日に3年間の出場停止処分を科せられたばかり。ゲリラ兵士から指導者となったダニエル・オルテガ大統領(74)は感染防止のための対策はまったくとっておらず、その妻でもあるロサリオ・ムリーリョ広報官は「政府は国民の健康を守る」とコメントしたものの、具体的な方法は何ひとつ示さなかった。

 AP通信によれば、オルテガ大統領はここ3週間、公の席に姿を見せておらず、国民の間には重病説が流れている状態。パンアメリカン保健機構のカリッサ・エティエン医師は「ニカラグアの無策は大流行をまねく危険性がある」と指摘。感染症に詳しいカルロス・クアント医師も「やっていることがすべて世界保健機関(WHO)の指針に反しているから、おそろしいことになる」と政府の姿勢を批判した。

 隣国でもあるコスタリカでは400人以上、ホンジュラスでは300人がすでに新型コロナウイルスに感染。ニカラグア政府は感染判明者をすべて国外からの流入者による3人のみと発表しているが、キューバの保健当局は「ニカラグアから帰ってきた2人が発熱し、1人は検査で陽性反応が出た」と語っており、感染者数はコスタリカやホンジュラスをはるかに超えているのではないかという見方も出てきている。

 首都マナグアの交通機関の運行は最小限で、多くのビジネスも“中断”となっているが、事態を懸念した司教が教会に臨時のメディカルセンターを設置してウイルス対策などの質問に答えられるようにしたところ、その数時間後に政府はこれを禁止。ウイルス感染防止への動きは8日段階で皆無に等しい状態となっている。

4/9(木) 14:54配信
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