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新型コロナ検査数、日本少なく―「疫学調査」優先の誤算、感染拡大、不安と不満生む(真相深層)
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO56692180S0A310C2EA1000/

 新型コロナウイルスに対する日本の検査数はなぜ海外に比べて少ないのだろう。感染の有無をみる
PCRの検査力に問題があったわけではない。厚生労働省が当初、医療行為としてではなく、
感染拡大を抑える「疫学調査」と位置づけたからだ。

 ただ、思うように封じ込めはできず、世界でも感染が拡大。専門家と一般の人々の認識にずれが生じ
「過少検査」への不安と不満が生まれた。
 がんにしろ生活習慣病にしろ、現代医療のイロハは「早期発見」だ。早い段階で診断がつけば
治療の選択肢も増え、症状が悪くなったり死に至ったりするリスクは減る。

公衆衛生の発想
 今回の新型コロナウイルスによる肺炎のように治療薬のない病気だと話は違ってくる。
早期発見できても必ずしも「早期治療」にはつながらない。医療としてみれば検査をする意味は薄れる。
 PCR検査を担ってきた国立感染症研究所は3月1日、脇田隆字所長名で「市民の皆様へ」と題した
文書をホームページ上に公表した。「検査数を抑えることで感染者数を少なくみせかけようとしている」
という批判に対し、事実誤認だと反論した。この文書に「積極的疫学調査」という医学用語が何度も登場する。
厚労省や感染研が検査を慎重に進めた理由を知るキーワードだ。

 疫学調査とは新しい感染症が発生した際、感染者や濃厚接触者、疑いがある人の健康状態を調べ、
病気の特徴や広がりといった感染の全体像をつかむ調査だ。患者一人一人を検査して治療する医療行為
ではなく、感染防止策を探るなど病気から社会全体を守る公衆衛生の発想に基づく。

 だからこそ感染研は必要な試薬や装置を組み合わせて自前で確立した検査手法にこだわった。
中国・武漢をはじめ世界に供給していた製薬世界大手ロシュの検査キットを使って国内の民間会社が
検査をし出すと、性能のばらつきで疫学調査にとって最も大切なデータの収集が難しくなる。
これが検査能力の拡大を阻むボトルネックとなった。