新型コロナウイルスで多くの製造業が減産に動くなか、北陸の電子部品メーカーは好調を維持している。高速大容量の通信ができる第5世代(5G)移動通信システムの普及を見据えてスマートフォン関連の生産が伸び、在宅勤務の拡大からモニター、キーボードなどの需要も出ている。大型連休中も操業する企業がある一方、受注の変動が激しい業界でもあり、関係者の間では先行きへの警戒感が漂う。



 光通信機器の開発・製造を手掛ける白山(金沢市)は、志賀町の石川工場がフル稼働となっている。北米のデータセンター向けに光ファイバーのコネクターの受注が寄せられており、連休中に一部の生産ラインを動かして納期に間に合わせる計画だ。



 同社のコネクターは速く大量のデータ通信ができる特長があり、5Gの普及に合わせて拡大が見込まれるという。



 担当者は「6月ぐらいまでは納期対応に追われて忙しいだろう」と見通す。ただ、需要の波は数カ月サイクルで大きく変化する市場であるとし「コロナの影響が波及して一気に風向きが変わる可能性もある」と指摘する。



 「直近の生産は品目に応じて凸凹しているが、全体ではなんとか増産基調だ」。スマートフォン部品の「表面波フィルター」を生産する金沢村田製作所(白山市)の担当者はこう話す。



 売れ行きが好調で生産が追いつかない製品がある一方、景気減速を想定した発注の先送りから生産調整を検討する製品も出ている。



 工場の稼働は堅調だが、同社が気に掛けるのは、社内での新型コロナウイルス感染の防止だ。村田製作所では福井、富山のグループ会社で既に感染者が発生しており、金沢でも防止に細心の注意を払う。



 高稼働のさなかに生産停止となれば影響は大きい。同社は、生産管理などの間接業務に就くスタッフ1500人のうち、3割に当たる450人程度を在宅勤務にする目標を掲げ、感染リスクの低減に努める。



 企業のテレワーク普及により、EIZO(白山市)ではモニター販売が国内、欧米とも伸びている。在宅勤務でモニターを2画面に増やし、作業効率を高める動きがあるという。



 PFU(かほく市)は4月、直販で取り扱う高品質キーボードの販売が2倍となった。プログラマーが長時間の在宅勤務用に会社と同じ設備を整える需要が出ている。小型スキャナーの販売も倍増した。



 PFUによると、国が全国民に一律10万円を配る「特別定額給付金」の受け付けに伴い、自治体からの業務用スキャナーの引き合いが高まっている。



 各自治体は郵送されてきた紙の申請書を電子化して管理するシステムの準備を進めており、スキャナーや文字をデータ化する光学文字認識(OCR)のソフトウエアが求められているという。

2020/04/29 01:23
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