「フロリダの住宅街をワニが闊歩(かっぽ)していた」「コヨーテがサンフランシスコの歩道を歩いている」

 2020年3月下旬に米国各地の都市が封鎖されてから、ツイッターなどのSNS(交流サイト)でこんな報告が相次ぐようになった。人々が消えた街に現れた野生動物たち。4月には、米航空宇宙局(NASA)が宇宙から地球を捉えた画像を公開し、いかに地上の空気汚染が緩和されたかを証明してみせた。ニューヨーク周辺の米東北部では3月、15〜19年3月の平均に比べて二酸化窒素量が30%削減されたという。

 こうした報道は、新型コロナウイルス感染拡大による死者の急増や医療崩壊といった暗い話題が続く中、米国民に明るい話題をもたらした。だが同時に、これまでふたをしてきた「環境問題」に再び目を開かせるきっかけにもなった。自分たちの行動が、環境にこれほどのインパクトを与えるという事実を目の当たりにしたからだ。

 ウォール街にも学びはあった。4月20日、ニューヨーク市場に上場する原油先物のWTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)で、5月物の価格が史上初のマイナスになる異常事態が起きた。新型コロナによる需要の低迷で、使われない原油が米国の貯蔵設備を埋め、カネを払ってでも引き取ってもらわなければならない状況に陥ったからだ。

 環境をコントロールできなければ、人々の生活も経済も安定させることはできない。このことを思い知った国民が一気に「環境思考」を高める可能性は高い。コロナ後の米国では、環境配慮型の商品が売れ、人々は引き続き移動を控え、デジタル化も一気に進む。そうなれば、従来型の産業は低迷し、代わりに環境思考の産業が勃興する。

 米国のニューノーマルの2つめは、「産業構造の環境シフト」だ。

政界を動かす「極左の子どもたち」

 米国で今、「極端な左(Far Left)」と言われる環境活動団体がひそかに勢力を増している。

 「2030年までに米国をカーボン・ニュートラルにすると今ここで約束して!」

 ワシントンDCの議員オフィスを占拠し、大きな横断幕やプラカードを手に抗議の声をあげる。手拍子と歌に合わせて踊り、議員が要望を受け入れるまで廊下に居座り続ける。議員事務所の入り口を封鎖し、逮捕される活動家もいる。

 注目を集めるのはその強硬ぶりに加え、活動家たちの若さだ。10〜20代が中心で、中には10歳前後の「子ども」もいる。

 団体の名は「サンライズ・ムーブメント」。数人の大学生が中心となり、17年に組織化された。共同創始者の一人でエグゼクティブ・ディレクターを務めるバルシニ・プラカシュさんは、南インドからの移民の家庭に生まれた27歳。子どもの頃に何度もテレビで見たスマトラ沖地震と津波の映像が頭から離れず、人生を環境問題に費やすようになった。

2020年5月13日
https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00119/051100020/