https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20200521-00351132-toyo-bus_all

年金の支給開始年齢は60歳から65歳へ段階的に引き上げられつつあります。
会社員として勤めたことがある人の場合、2021年度以降に60歳を迎える男性(1961年4月2日以降生まれ)は
65歳からでないと老齢年金(老齢基礎年金・老齢厚生年金)は受け取れません。
また女性については、2026年度以降60歳を迎える人(1966年4月2日以降生まれ)が65歳の支給開始となります。

この老齢年金については、本来の支給開始年齢より前倒しで受け取る「繰り上げ受給制度」があります。
繰り上げを行うと、早く年金が受けられるようになりますが、その分、年金は減額されることになり、現行制度上、
1カ月繰り上げにつき0.5%減額されることになります。

読者の皆さんは、何歳での年金受給開始を考えているでしょうか。「65歳になるまで待てない」という人も少なくないと思いますが、
繰り上げ制度で受給を前倒しにすると老後はどうなるのか、具体的に検証してみましょう。

■5年の繰り上げで「年金額の3割」が削られる

繰り上げ受給制度では、1カ月単位で繰り上げが可能ですが、本来65歳から受けられる年金を60歳0カ月から繰り上げ受給する場合、
5年(60カ月)の繰り上げで30%(0.5%×60カ月)減額される計算となります。残りの70%分で受給することになるわけです。

老齢厚生年金を繰り上げると、老齢基礎年金も同時に繰り上げる必要があり、それぞれの年金について減額がされることになります。
この繰り上げ減額率による年金の減額は生涯続くことになり、「65歳になると減額がなくなって100%の額に戻る」というわけではありません。
やがて、繰り上げ受給した場合と、65歳開始で受け始めた場合で、「生涯の受給累計額で逆転するとき」が来ます。

本来65歳から受けられる年金について60歳0カ月(30%減額)で繰り上げ受給した場合の累計額に、
65歳で受給を開始した場合の累計額が追いつくのは、76歳8カ月時点になります。
これより長生きすれば65歳開始のほうが累計額で多くなる計算です。

なお、繰り上げの1カ月あたりの減額率は0.5%から0.4%へ改正される予定(2022年4月を予定)ですが、
その場合5年繰り上げ(24%減額)の累計額に65歳受給開始の累計額が追いつくのは80歳10カ月となります。

■繰り上げ請求したら、何があってもキャンセル不可

これが繰り上げ受給制度の基本的な特徴で、減額率の改正がされると、逆転年齢が後になる分、
繰り上げがしやすくなるように見えますが、ほかにも多くの注意点があります。

年金は月割りで計算されますが、繰り上げ請求をした場合、本来の支給開始年齢到達日ではなく、
繰り上げ請求をした日に老齢年金を受給する権利が発生し、繰り上げ請求した日の翌月分から支給の対象となります。
そうして、減額された年金の受け取りが始まるわけですが、当然のことながら、繰り上げ請求を行うと、後で取り消しができず、
後から繰り上げなしに変更することもできなくなります。

繰り上げを考える時点で収入が少なくても、あるいは年金を早めに受け取りたいと考えても、
生活状況や考え方が近い将来に変わることもあります。繰り上げ後の在職期間中(厚生年金加入中)に給与・賞与が多くなった場合、
収入は増える一方、繰り上げで減額された老齢厚生年金が在職老齢年金制度によりさらに減額されることもあります。

20歳から60歳までの40年間(480カ月)保険料を納めた場合、65歳からの老齢基礎年金は満額の78万1700円(2020年度の年額)となります。
これを60歳0カ月で繰り上げ受給すると、54万7190円(30%減額)となる計算です。

20歳からで60歳までの40年分の納付期間がなく満額に達していない場合は、本来60歳から65歳までに、
国民年金に任意加入して国民年金保険料(2020年度の月額は1万6540円)を納め、老齢基礎年金を増やすことができます。

しかし、繰り上げ受給をした人は、この任意加入をすることができなくなります。また、過去に経済的な理由から免除を受けた
国民年金保険料について、本来10年以内であればさかのぼって納めること(追納)ができますが、繰り上げ受給を行うとこの追納ができません。

繰り上げ後、厚生年金加入によって退職後の老齢厚生年金を増やすことは可能ですが、老齢基礎年金については
後で増やしたいと思っても増やせないことになります。将来のため年金を増やす、という点で制約を受けることになります。

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