2020.5.22 19:30
https://www.sankei.com/smp/west/news/200522/wst2005220023-s1.html
新型コロナウイルスの中等症患者の専門病院となった大阪市立十三市民病院(淀川区)が、少なくとも年内は専門病院として稼働することが22日、分かった。全国的に感染者が減少傾向にあり、府内でもほかの医療機関を暫定的に通常体制に戻す中、感染拡大の「第2波」に備える「要」となる。予想される収益悪化には市の交付金などで対応し、医療機関支援の枠組み構築を模索する。
「十三市民病院は、医療崩壊を起こさせないための砦(とりで)。重症患者を治療する周囲の病院の負担も減らすことができている」。松井一郎市長は22日、市役所で記者団の取材にこう強調。感染者の減少が続けば一般外来の再開はあり得るとしたが、「ワクチンが開発されるまで」(松井氏)は、専用病院として運用する考えを示した。
府の新規陽性者は14日以降、0人〜1桁台で推移しており、収束傾向にある。この状況で各医療機関がコロナ患者専用の病床を確保し続ければ一般患者の受け入れ枠が減り、病院経営にも影響を及ぼす。このため、府はコロナ患者用の病床を一時的に通常病床に戻す弾力的な運用方針を決定。今後地域医療のバランスをみながら、十三市民病院を中心に患者の受け入れを調整する方向だ。
十三市民病院では22日には、一般病床の感染症対策工事が終わり、受け入れ可能な病床数は46床に拡大。6月中旬には目標の90床に達する見込みとなっている。感染症の専門医を確保し、医師約40人、看護師約190人態勢で対応する。
新規陽性者のほかにも、宿泊施設や自宅で療養中の軽症者で症状が悪化した人や、症状が改善した重症患者も受け入れる予定。担当者は「病床や病院スタッフのマンパワーを無駄にしないように運営を考えていく」とする。高齢の軽症患者を受け入れる専門病院として、民間の阪和第二病院(大阪市住吉区)も、24床を備えて6月上旬から運用を開始する。
東京医療保健大の菅原えりさ教授(感染制御学)は「今はコロナ対応のためにがん患者の手術が延期になるなど、一般医療が圧迫されている。通常の医療とコロナ医療を担う病院とを分け、共存態勢を整える必要がある」と指摘。そのうえで「ウイルスの特性上、秋冬ごろに第2波が起こる可能性がある。専門病院を中期的なスパンで運用し、受け皿を確保しておく意義は大きい」としている。
ほかの都市でも、コロナ専門病院の設置を求める声がある。東京都医師会は4月、コロナ専門病院(病棟)の設置を提案した。同医師会の猪口正孝副会長は「民間病院は経営を考えるとなかなか踏み切れない。公立病院がリーダーシップを執るべきだ」と指摘。ただ、地域の合意を得ることや転院調整がハードルとなる場合が多く、「(大阪のように)病院全体をコロナ専門として運営できているのは、かなり珍しいのでは」と話す。
再び感染拡大が生じることを前提とした医療体制の整備は不可欠だ。秋以降は感染拡大とインフルエンザの流行が重なる懸念もあり、大阪府の吉村洋文知事は「重症者向けの集中治療室(ICU)のセンターをつくるべきだ」と、首都圏と関西圏に1カ所ずつの設立を提案。人工呼吸器を備えたプレハブの臨時センターも有効だとしている。