昨年7月の参院選広島選挙区で初当選した自民党の河井案里氏(46)=参院広島=と夫の克行前法相(57)=衆院広島3区=が広島県内の地方議員らに現金を配ったとされる買収疑惑で検察当局が、克行氏が100人近くに総額で2千万円を超す現金を配ったとして公選法違反(買収)の疑いで立件する方向で最終調整に入ったことが22日、関係者への取材で分かった。

 克行氏は参院選を控えた昨年3〜6月ごろに選挙区となる県内各地を巡り、それぞれの地域に支持基盤を持つ自民党の県議や市議、首長らに現金を渡すなどしたという。検察当局は激戦を制するため、票の取りまとめや支援拡大を図る趣旨だったとみている。地元政界を巻き込んだ大規模な選挙違反事件となる様相が濃くなった。

 関係者によると、克行氏は案里氏の立候補が決まった昨年3月以降、県議や市議、首長をはじめ、後援会組織を束ねる幹部ら計数十人にそれぞれ数万〜数十万円を渡した疑いがある。さらに、選挙のために臨時で加わり企業回りなどを担った複数の陣営関係者に対しても、公選法は原則無報酬と定めているのに、選挙活動の対価として数十万円を渡すなどした疑いがあるとして同法違反容疑で立件する方針。被買収者は100人近くに上り、買収額は計2千万円を超える見通しという。

 参院選広島選挙区では、自民党本部が2議席独占を狙い、党県連が推す現職の溝手顕正氏に加え、県議だった案里氏を擁立。無所属現職の森本真治氏を含めた激戦となった。党本部は、溝手氏陣営の10倍に当たる1億5千万円を河井夫妻側に提供するなど全面的に支援。案里氏が初当選し、ベテランの溝手氏が落選した。

 関係者によると、広島地検が今年1月、案里氏陣営が車上運動員14人に法定上限を超える報酬を渡したとされる公選法違反事件で河井夫妻の自宅を家宅捜索した際、現金の配布先とみられる100人以上のリストを押収。検察当局はこのリストなどを基に議員や首長らの聴取を進めてきた。党本部が提供した1億5千万円の一部が、車上運動員への違法報酬の原資になっていたことも判明している。

 検察当局は6月17日に閉会する国会のスケジュールもにらみ、立件時期を検討しているもようだ。

中国新聞 2020/5/23
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