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毎日新聞

佐賀のタマネギ農家に打撃 外食自粛、給食中止で価格大幅下落 出荷量全国2位
出荷調整のため畑に置かれたままのタマネギを見つめる片渕さん=佐賀県白石町で2020年5月21日午後2時57分、池田美欧撮影
 新型コロナウイルスの感染拡大による外食自粛などで、全国2位の出荷量を誇る佐賀県産タマネギの価格が大幅に下落している。今年は豊作で質の良いものができていただけに、農家は落胆の色を隠せない。JAさがは31日まで出荷を遅らせる緊急措置を取っている。【池田美欧】

 収穫が盛んな白石町の畑では、収穫時期を迎えたタマネギがずらりと並んでいた。県たまねぎ部会長の片渕康弘さん(68)は「一番良い旬の時期に価格がどんと落ちてしまった。肥料などこれまでかかった経費もまかなえず、次年産用の種を買うための収入もない」と頭を抱える。

 2018年産の県産タマネギの出荷量は10万9200トンで、北海道の67万4700トンに次いで全国2位。タマネギは約6割が業務用や加工用だが、政府の緊急事態宣言を受けた外食自粛や学校休校による給食の中止などで需要が低迷。北海道産と佐賀産が共に豊作だったため需給バランスが崩れた。JAさがによると、3月は1キロ当たり平均118円でほぼ前年並みに推移していたが、4月中旬以降に価格が急落。4月は同59円となり、大型連休明けは30〜40円台まで下がった。

 価格の下落を受けJAさがは14日から月末まで、5月の中旬から下旬にかけて関東と九州に出荷する予定だったタマネギの8割分約1万1000トンを対象に、出荷を遅らせることとした。市場価格の状況に応じて出荷するという。価格安定を目的とした国の「重要野菜緊急需給調整事業」に基づく措置で、出荷できなかった分は、一般的に例年の平均価格の実質15%ほどが国の補助金で支払われるという。

 県産農家にとっては2016年のタマネギの病気「べと病」に続く大きな打撃となった。片渕さんは「今年は天候に恵まれ豊作だった。べと病よりもひどい。この際もう農家を辞めようと言っている人もおり、心配だ」と語り、「みずみずしく甘みが強い良いタマネギができている。佐賀ならではのタマネギをぜひ食べてほしい」と訴えている。

 ◇「食べて応援したい」県職員向け販売実施

 佐賀県はタマネギ農家の支援のため21、22両日、県職員向けの販売を実施した。2日間で段ボール箱計1066箱分のタマネギ約21トンが搬入された。

 県産品の消費を促す「佐賀支え愛」キャンペーンの一環。県園芸課が各課に呼び掛け、有志の職員がタマネギ20キロ入り1箱を1000円で購入した。同課は「職員が買い支えすることで少しでも力になれれば。食べて応援したい」と話した。

 また、国と県は22日、新型コロナウイルス関連の農業支援策に関する説明会を佐賀市で開いた。農家からの相談を受ける市町やJAの担当者ら約150人が参加した。

 会合では、野菜や果樹、花などの農家に対し、一定の条件を満たせば1ほ場につき1回限りで、10アール当たり5万円を交付するといった国の「高収益作物次期作支援制度」などを説明。県は園芸や畜産関係の支援事業を説明し、タマネギ農家への支援についても検討中だとした。

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