「先生。実は、うちにはWi−Fi(ワイファイ、無線LAN)がないんです」。群馬県立高校の女性教諭は新型コロナウイルスによる休校中の5月中旬、オンライン授業に一度も参加しない女子生徒が気になり、電話をかけた。「家ではスマホ(スマートフォン)を使わない」「接続方法が分からない」。要領を得ない返答を繰り返した後、生徒は家庭にネット通信環境がないことを打ち明けた。

 教諭は「本人の責任ではないのに授業を受けられず、つらい思いをさせてしまった」と肩を落とす。ほかにも家計を心配して無料Wi−Fiのあるコンビニエンスストアなどに行く生徒もいると知った。3月の休校開始が唐突で、生徒に事前に確認する間もなかったという。

 県は学校休校を受け、オンライン教育環境整備のために県立学校の生徒に1人1台のパソコン整備を決定。通信環境のない家庭への支援も検討している。だが、今回の休校中、ネット環境の有無で各生徒の学習機会に差が生じたことは否めない。

 今回、民間学習塾やオンライン教材会社は休校を商機と捉え、受講生を増やしたところもある。しかも新型コロナに関する県独自の警戒度では塾が学校よりも先に再開。多くの私学は休校中もオンライン授業を実施し、私立と公立で学習機会に差が付いた。

 太田市のパート女性は今春、中学3年の娘を塾に通わせるために貯金を取り崩した。離婚した元夫からの養育費はゼロ。頼れる身内もないが、高校受験を控えた娘を放っておくわけにはいなかった。「お金がどんどん減って怖いが、仕方ない」

 一方、高崎市など県内15カ所で低所得世帯の小中学生向けの無料学習塾を運営するNPO法人「学習塾HOPE」も、5月半ばから中学3年生に絞って再開。新型コロナによる経済的影響で利用希望者は増えるとみる。代表の高橋寛さん(71)は「『貧困の連鎖』を止めるために教育が重要だ」と訴える。

 教育格差の問題に詳しい早稲田大学の松岡亮二准教授(教育社会学)によると、子どもの間には元々、親の学歴や収入、地域による格差があり、今回の休校中に生じた学習機会の差は学校再開後も埋められない可能性があると指摘。「皆に同じものを与える形式的な『機会の平等』では格差が埋まらない」と話し、支援が必要な子どもや地域に行政が追加投資して、その効果を検証する必要性を強調する。【鈴木敦子】

毎日新聞2020年6月3日 11時45分(最終更新 6月3日 11時45分)
https://mainichi.jp/articles/20200603/k00/00m/040/060000c

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