6/7(日) 7:35配信
産経新聞

鳥取県が購入をあっせんしたマスク(同県提供)

 新型コロナウイルスの感染拡大で品切れが続いたマスク。自治体の中には独自にマスクを確保し、「マスク購入券」を配布する取り組みを行ったところもあった。マスク購入券を実施できた自治体には共通項があった。地元を地盤にした小売りチェーンの存在だ。

 ■マスク購入券拡大

 マスク購入券は、福井県が先駆けになった。同県は1箱50枚入りマスク60万箱を確保。購入券を4月23〜30日に県内の約28万9千世帯に送り、それをドラッグストア「ゲンキー」の県内店舗で提示すると、マスクを最大2箱購入できる仕組みだ。

 同様の取り組みは石川、富山、鳥取の3県にも広がった。石川、富山は1箱50枚入りを2箱まで購入できる仕組み。鳥取は1セット10枚入りを、期間を2つに分けて最大4セット買えるようにした。

 福井県の杉本達治知事は、マスク購入券の取り組みは県職員の発案から始まったと明かし、「他県が続いたことは、この取り組みが効果的だという証左だ」と胸を張った。

 ■「安心して購入」

 この事業で大きな課題は販売店の確保だ。購入券を入手しても、それを使うことのできる店舗が県内にまんべんなく立地していないと、店に遠い住民の負担は大きく、地域で不公平感が強まる。

 福井県が選んだゲンキーは同県坂井市に本社を置き、県内で64店を展開しており、全17市町に必ず店舗があった。

 石川県では、同県白山市を拠点とするドラッグストア「クスリのアオキ」が選ばれた。店舗がない市町も一部あったものの県内で73店を展開。県内は車の利用者も多く、大きな不便にはならないと判断したという。同県産業政策課は「県内で一番店舗があり、迅速に県民が安心して購入できる状況にしたかった。実現できたのは、店の協力が大きい」と強調した。

 富山では、単独で全県的にカバーするドラッグストアがなく、地元スーパーのアルビス(同県射水市)、大阪屋ショップ(富山市)の2社計76店に販売を任せた。担当の県民生活課は「それぞれ出店が少ない地域を補う形になっており、販売網が整えられた」と話していた。

 ■鳥取は大量8社で

 一方、鳥取県の場合は販売スーパーが8社に及んだ。これには、東西120キロに及ぶ同県ならではの事情があった。

 同県は東西に長いうえ、古来は因幡国(いなばのくに)、伯耆国(ほうきのくに)の2つの国だった歴史的な背景も加わり、県域は3エリアに分かれる。県都の鳥取市を中心とした東部▽倉吉市がある中部▽米子市と境港市が位置する西部。それぞれで文化・経済的なつながりを形成している。

 そしてスーパーも、全県的に展開していたり、本店所在地から“越境“して店舗をもったりするところはあるものの、この3つのエリアごとに主力スーパーが異なったのだ。

 県の担当課は「3つの地域それぞれで主力のスーパーが違い、8社に依頼することになった」と説明。そのうえで、「地元のスーパーなので、店側もすぐに協力を決めてくれた」と感謝を述べた。

 ほかにも共通項として、いずれの県も購入券の配布に、指定したエリアすべての郵便受けに投函(とうかん)する日本郵便のサービス「タウンプラス」を利用。世帯を対象にすることで、手間をかけずに購入券を配布できた。

 先駆的な取り組みには何らかのポイントがある。今回は、漏れなく全域に届けることができるかどうか、が分かれ目だったようだ。

https://news.yahoo.co.jp/articles/843de5c6aefb037b94edaa08efa27c70b844adec