6/23(火) 10:29
毎日新聞

AIが番台役に 顔認証システム導入 共同温泉の負担軽減へ 大分・別府
入り口の携帯端末で来訪者の顔を識別し、鍵を開ける=大分県別府市の寿温泉で、大島透撮影
 大分県別府市の共同温泉「寿温泉」は、AI(人工知能)技術を使った顔認証システムを無人の「番台」役として6月中に導入する。番台が確保できない多くの共同温泉の負担軽減が期待されるうえ、入浴客の来訪時刻も確認ができ、新型コロナウイルスの対策にも役立つ。【大島透】

 温泉入り口に携帯端末を設置。入浴客が画面に触れると、携帯カメラが顔写真を撮影する。登録者の顔と一致すれば、入り口の鍵が開く。同市元町のAIシステム開発会社の吉田柳太郎社長(53)が開発した。

 市によると、70の市有区営温泉、13の区有区営温泉は、地元の温泉組合員の入浴料などで運営している。以前はこれらの共同温泉で入浴する市民が大多数だったが、各家庭に風呂が普及して温泉組合加入者は減り続けている。運営側の高齢化や人手不足も進み、共同温泉の存続は年々困難になっている。

 市中心部にある寿温泉も運営が苦しく、2017年からNPO法人「別府八湯温泉道名人会」へ管理を委託した。同法人は、88カ所以上の別府温泉へ入浴し「温泉名人」の称号を獲得した温泉愛好家ら160人の組織だ。「地元の温泉文化を守りたい」と現在、苦境にある共同温泉の管理運営を2カ所、湯船などの毎日の清掃を10カ所で請け負う。

 AIシステムを導入するのも、午前8時から午後10時までの営業時間を担える番台の日当が捻出できないからだ。入浴料は月2回発売する30枚の回数券が2000円。無人のためチケットによる支払いは、入浴者の良心を信じるしかなく、不審者や無銭入浴者が来ても分からなかった。

 入り口で撮影された写真は、AIが法人の端末へ送り、誰が来訪したかを知らせる。来訪時刻も記録に残るため、クラスター発生の際は対象者の選別が容易にできる。

 同法人の佐藤正敏・理事長(48)は「入浴者の顔認識だけに使い、それ以外の個人情報は求めない。番台を雇う経費負担が減れば、共同温泉衰退の歯止めになるだろう。毎日入浴に来る地元高齢者の見守りにも役立つはずだ」と期待する。

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