その女性は米サンディエゴのスターバックスにマスクを着用しないで入店した。そこでバリスタは、彼女にマスクを着けるよう頼んだが拒まれた。だからバリスタは仕方なく、彼女のオーダーを受けなかった。

この対応に怒り狂った彼女は、バリスタの写真を撮り、彼の顔と名前をフェイスブックでさらし、こう書いた。

「みんな、こいつがスターバックスのレニンよ。私がマスクを着けていないからといって、私へのサービスを断ったバリスタ。今度は警察を呼んでやる」

その女性の名前は、アンバー・リン・ジル。フェイスブックで人々の共感を得ようとしたのだろう。だが彼女の投稿はかえって反発の嵐を招いた。

米紙「ワシントン・ポスト」によれば、すぐに10万件以上のリアクションとコメントがつき、5万回近くシェアされたという。多くの人がバリスタのレニン・グティエレスを擁護し、なかにはジルを「カレン」と呼んで揶揄する声もあった。

カレンとは、比較的最近になって作られた新語。“白人女性の特権”を利用して不適切な言動をとる白人女性を指すときに使われる名前だ。

そんな「カレン」ことジルにさらし者にされたグティエレスについては、「自分のやるべき仕事をしていただけの若い子に公の場で恥をかかせる必要はまったくない」などのコメントが寄せられた。

そのようにグティエレスを支持する多くのコメントの中で、彼にチップを渡したいという声がいくつも上がってきた。すると、この投稿に目をとめた男性マット・コワンが、クラウドファンディングの「GoFundMe」でグティエレスへのチップを呼びかけることに。

コワンが開設したGoFundMeのページタイトルは「サンディエゴのカレンに立ち向かったレニンにチップを」。

コワンは1000ドル以上は集まらないと予想していたが、わずか3日で3万2000ドルを突破。6月27日時点で5万7000ドル近くに達している。

■寄付金でダンサーになる夢をかなえたい

グティエレスはフェイスブックに動画を投稿し、みんなからのサポートと寄付に感謝すると同時に、ジルとの間で何があったのかを説明した。

彼によれば、ジルがマスクを着けずに入店してきたために、スターバックスのマスク着用ルールが書かれた貼り紙を指して促したところ、「罵声を嵐のように浴びせてきた」という。さらに彼女はグティエレスの写真を撮り、スタバ本社に連絡してやると脅したらしい。

サンディエゴ市は5月1日から、公共の場でのフェイスカバー着用を義務付けている。

問題となったジルの投稿は、すでに削除されたが、彼女はこんなことも書いていた。

「マスクはばかげているし、マスクを着けている人もばかだ」

グティエレスは、予想もしてなかった多額のチップの使い道について「大きな計画」があるという。ダンサーになる夢をかなえるために、そして人々にダンスを教えるために役立てるとのことだ。

「みんなからの寄付で、僕は夢を現実にできます。本当に心から感謝しています」

6/28(日) 9:38 クーリエ・ジャポン
https://news.yahoo.co.jp/articles/5affd71238703927ad225409c5f5b5cad585a1b9?page=1