京都府立医科大(京都市上京区)が学部や大学院の新入生らを対象に、両親が医師かどうかや子どもが欲しいかといった個人的な事情を尋ねるアンケートを、2020年度まで5年にわたって実施していたことが29日分かった。研修した診療科や年齢など個人の特定につながる質問もあった。府立医大は「女性研究者のキャリア支援などに活用するためだった」と説明するが、専門家は「調査目的と質問内容に合理性がない。学生が不安になる恐れがあり不適切だ」と指摘している。

 アンケートは無記名方式。年度初めのオリエンテーションなどに参加した学部の新入生約100人、研修医60〜70人、大学院生30〜40人に配布、回収されている。用紙に調査目的の記述はなく、職員が毎年、趣旨を学生らに口頭で説明していたが、今年は大学院生と研修医に伝えていなかったという。
 質問では父親、母親の職業を「医師/医師以外/その他・離別」の選択肢で尋ねているほか、結婚や子どもを持つことの願望の有無、結婚相手に望む職業や収入、女性が育児しながら仕事を続けることの是非を聞いている。家庭状況や研修した診療科、これまで勤務した組織に関する項目などもある。
 実施主体は、教職員でつくる学内組織「ワークライフバランス支援センターみやこ」。同センターが調査や集計を自ら行い、質問内容や調査手法に関する外部のチェックはなかった。ジェンダーやワークライフバランスに詳しい専門家を入れずにアンケートを作成、実施したという。
 矢部千尋センター長は「女性研究者が働きやすい環境づくりに役立てるために実施したが、配慮が足りなかった。時代にそぐわない内容もあるので改善する」と話す。
 同志社大の川口章教授(ワークライフバランス)は「個人的な事情を尋ねるアンケートを、目的や情報の取り扱い方法を示さず、大学と新入生という上下関係の下で実施するのは不適切」と指摘する。
 大阪府立大ダイバーシティ研究環境研究所の巽真理子特認准教授(女性研究者支援)は同センターの活動理念を評価しつつも「ワークライフバランスの問題には男性も大きく関係しているはずだが、設問からは女性だけの問題として扱っている印象を受ける。また個人に関する調査は手順を慎重に踏む必要があり、ジェンダーや社会調査の専門家がチェックした方がよかった」とする。

京都新聞 2020/6/30 08:00 (JST)6/30 08:51 (JST)updated
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