大学合格者ランキングでは、1人の受験生が複数の大学・学部に合格した場合、ダブって数える「延べ合格者数」が一般的だ。これに対し、同じ大学の複数学部に受かっても合格者1人とカウントする「実合格者数」の指標もある。併願可能な私立大を実合格者数でとらえると、何が見えてくるのか。大学通信の安田賢治常務が解説する。

今年のMARCH(明治大、青山学院大、立教大、中央大、法政大)の現役「実合格者数」ランキングを見ていこう。実合格者数の調査は2172高校にアンケートを送り、1820校から回答を得た。未回答の高校もある。また、推薦入試やAO入試の合格者、付属・系属校からの内部進学者なども含まれている。

各大学の現役の「合格者併願率」(延べ合格者数÷実合格者数)は、明治大と立教大が1.30、中央大と法政大が1.27、青山学院大が1.13だった。近年、入学者に占める割合が高くなっている推薦入試やAO入試は1.0になり倍率を押し下げるが、それを考慮しても低い。受験生は同じ大学の多くの学部を併願しているわけではないことが分かる。

1人の受験生が同じ大学のいくつもの学部・方式に出願していても1人と数える「実志願者数」のデータを見ても、MARCHはそれほど多くない。法政大が実志願者数全国トップで5万2276人だが、延べ志願者数は10万3628人で、「志願者併願率」(延べ志願者数÷実志願者数)は1.98だ。他の大学の志願者併願率を見ると、中央大2.39、明治大1.99、立教大1.98、青山学院大1.87だった。志願者数には浪人生も含まれていることを考えても、平均すると1人2学部・方式程度しか受けておらず、現役の合格者のみをカウントする合格者併願率となるとさらに低くなる。

「横の併願」より「縦の併願」が主流に
今は1大学の複数学部・方式を受ける「横の併願」ではなく、難易度に差をつけていろいろな大学の類似学部を受ける「縦の併願」が主流だからだろう。高校でのキャリア教育が進み、大学で何を学ぶかを軸に、学部で大学を選んでいるからだ。「何が何でも○○大学を目指す」というような受験生は、少数派になってきている。特にMARCHは全大学でセンター試験利用入試を行っており、大学間で併願しやすいこともある。

そのMARCHの現役実合格者数トップは、付属・系属校を除くと山手学院(神奈川)の325人。卒業生数が478人だから、3分の2に相当する(ただし、MARCH各大学間の併願合格者はダブって数えている)。2位は大宮開成(埼玉)の309人だ。3位は川和、4位は柏陽、5位は厚木と、神奈川の県立高が上位に並んでいる。神奈川勢が目立つのは、立教大を除くMARCHは神奈川や東京多摩地区にキャンパスがあり、通いやすいからだろう。

浪人を含む延べ合格者数ランキングでは川和が553人とトップで、大宮開成の432人を上回っているが、現役実合格者数では大宮開成が逆転した。この逆転現象は7位の桐光学園(神奈川)でも見られる。現役実合格者は242人、同延べ合格者は275人で、合格者併願率は1.14と低い。そのため、国学院久我山(東京)、国学院(東京)、大宮(埼玉)などより延べ合格者数は少なくても、実合格者数は上回る結果となっている。

6/30(火) 12:12配信
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