日本の沖縄美ら島(ちゅらしま)研究センターの富田氏らによって、ジンベイザメの目が3000本の小さな歯で覆われていることが明らかにされました。

陸生及び水生の脊椎動物は、目をまぶたや瞬膜で覆うことで保護しています。

また、まぶたや瞬膜をもたない無脊椎動物(カタツムリなど)は、目を頭部に引き込むなどして保護しているのです。

しかし研究者が調べたところ、ジンベイザメは脊椎動物でありながら、まぶたも瞬膜も持っておらず、代わりに無数の細かな歯からなる装甲で目を保護すると共に、無脊椎動物のように目全体を頭部に引き込む能力があると判明しました。

ジンベイザメはどのように歯を使って、目を保護しているのでしょうか。

■ ジンベイザメの目は歯で守られている

ジンベイザメの目は頭部の左右に突き出ており損傷に対して脆弱である
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ジンベイザメは最大の魚類であり、全長は18mを超え、その目は上の図のように頭部の左右に突き出るように配置されています。

ですが突き出た目は損傷に対して非常に脆弱であり、他のサメのように瞬膜では十分に保護できません。

そこで研究者は水中超音波検査と断層撮影などの手法を駆使して、生きている標本と死んだ標本の両方を分析することで、ジンベイザメの目の謎に迫ろうとしました。

目の周囲を守る硬い表皮には歯がビッシリとはえている。今回の研究では2900個の歯が確認された
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結果、意外な事実が判明します。

ジンベイザメの目の周辺は凝集した約3000個の細かい歯で覆われていることがわかったのです。

細かな歯の一つ一つは上から見ると木の歯のような形をしており、内部には血管や神経の通り道と考えられる空洞があいていました。

一つ一つの歯をみてみると、他の動物の歯と似ていることがわかる
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底の部分に欠陥と神経が通ると考えられる穴がみえ
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これらの歯はエナメル質で覆われ、内部には血管と神経が通る穴があると考えられます。

また形状も、通常のサメの皮膚にみられる歯状構造とは異なり、水の抵抗を考慮してものではなく、防御などの機械的保護のために存在しているのでしょう。

引っ込めて隠すこともできる

重装甲の目は引っ込めて隠すこともできる
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今回の研究では生きた標本に対する調査も行われました。

ジンベイザメは絶滅危惧種ですが、日本の沖縄にある美ら海(ちゅらうみ)水族館ではジンベイザメの安定的な飼育が成功しています。

結果、動画のように、ジンベイザメは脅威が迫った場合には目を頭の中に引き込めることがわかりました。

目を守るための専門の装甲を備えるだけでなく、任意で引き込んで隠すことができる動物は、これまで知られていません。

現在、サメにとって重要なのはなにより嗅覚であり、視覚は重要ではないと考えられています。

しかしジンベイザメは自分の目に対して、強固で徹底した保護を行っており、既存の説とは相いれない結果となりました。

研究者は今後、サメの視覚能力を調査することで、サメにとって視覚がどれほど重要かを調査していく予定です。

研究内容は日本の沖縄美ら島(ちゅらしま)研究センターのTaketeru Tomita氏らによってまとめられ、6月29日に学術雑誌「PLOS ONE」に掲載されました。

続きはソースで
https://nazology.net/archives/63679