信号機のない環状交差点「ラウンドアバウト」の社会実験を、大分県が宇佐市の安心院支所前の交差点で開始して8カ月が過ぎた。県は交通状況を調査した結果、交差点内の車のスピードが緩やかになったり車列が短くなるなど、期待した効果が認められたとして、本格的な設置に向けて準備を進める方針だ。21年度の導入を視野に入れる。

■ ゆっくり周回で事故減少 渋滞解消にも効果

 欧米で導入が進み、国内でも13年に道路交通法が改正されルールが整備された。車が交差点中央にある円形の「中央島」を右側に見てゆっくりと周回するため、重大事故が減少。渋滞を解消する効果がある。信号がなく電気を必要としないため、停電でも機能する。特徴的な外観で地域のシンボルにもなる。

 一方で、多すぎる交通量には不向きだったり、ある程度の広さが必要なため、狭小な日本の都市部では導入が難しい面もあるという。

 安心院支所前の交差点での調査では、実験前は多くの車が交差点内で時速40キロ以上で走行していたが、実験後はほとんどが30キロ以内と低速に。重大事故発生の可能性が減少したとした。また、進入前の車列についても混雑時間帯で大幅に減少した。特に、宇佐から別府に向かう車列は休日の午前11時、実験前に最大で190メートルあったが30メートルまで、大幅に短縮した。

 利用者らに実施したアンケートでも、ドライバー、歩行者ともに大半が「安全になった」などと肯定的に回答した。一方で、通行方法を啓発する看板などのため「見えにくい」(ドライバー)、「車が止まってくれない」(歩行者)といった否定的な意見もあった。

 県道路保全課は「通行方法の周知は、調査時よりさらに進んでいる。本格導入の際には、啓発の看板は必要最小限にして、改善する」としている。近く、仮設の柵で囲っている中央島などの本格的な設計を始める。

■ スムーズさ実感 看板で見通し悪化も

 安心院支所前の交差点「ラウンドアバウト」は、私にとって自宅のある福岡県豊前市から、単身赴任先の大分市へ向かう際の通り道だ。

 6月下旬の午前中、宇佐市側から通りかかると、進入待ちの車両が数台、列をつくっていた。交通量が多く、なかなか進入できないが、自分の番になれば、通り抜けはスムーズだった。信号待ちのストレスがないのもありがたい。

 ただ、徐行などを呼びかける看板で、見通しが悪い点が気になった。アンケートでも同様の意見があり、改善の余地があると思った。

本格導入を目指す社会実験中の「ラウンドアバウト」=大分県宇佐市安心院町で2020年6月28日
https://cdn.mainichi.jp/vol1/2020/07/04/20200704ddp090040003000p/9.jpg

https://mainichi.jp/articles/20200704/k00/00m/040/020000c