人種平等を求める「Black Lives Matter」運動の余波が、アメリカ各地に広がっている。
最近では、アニメの声優を誰が務めるのかに焦点が当たった。人気アニメ番組の製作者や声優が立て続けに、
「白人声優が有色人種キャラクターの声を担うのは不適切だからやめる」と言い出したのだ。

(中略)
 いくら人種平等が大事だからと言って、何もそこまで目くじら立てなくてもと思う人もいるかもしれない。
だが、今回の騒動はさまざまな意味で当然のことであり、むしろ遅すぎた対応ともいえるのだ。

■なぜ「白人声優の降板」が当然なのか? 

 まず1つに、そもそもハリウッドには「有色人種のための役がとても少ない」という背景がある。
有色人種のキャラクターを顔が見えないからといって白人に任せてしまうと、ただでさえ恵まれない有色人種の声優たちのチャンスがさらに奪われてしまう。

 2つ目は、もっと根本的な問題だ。有色人種のキャラクターが白人の声でしゃべることは不自然なのである。
というのも、そもそも白人と黒人は声質が異なる。もし電話越しで顔の見えない状態で話したとしても、相手が白人か黒人かどうかはすぐわかる。

 なのに、これまで作り手はわざわざ白人声優を起用し、黒人の声真似をさせていたのだ。
これはある意味、有色人種に対するステレオタイプを増長させる行為でもあり、つまり、2重、3重の侮辱でもある。

 有色人種のキャラクターの声を白人が担当する問題は、決して初めて認識されたものではない。
実際、近年はそこを意識してキャスティングするケースも見られるようになった。

 2019年に公開された『ライオン・キング』では、主要キャラクターの多くが黒人キャストで固められている。
ライオンに黒人も白人もないわけだが、舞台となるアフリカに敬意を捧げるのであれば、アフリカ系アメリカ人に声を任せるのは決して間違いではない。

■変化を求められる「アメリカのアニメ映画」

 さらに、今回の騒動を機に、「声優の選び方そのもの」を見直すことになるのではないかと思う。人種平等の潮流だけでなく、コロナによる景気後退もまた、後押ししそうだ。

 この20年ほど、ハリウッドのアニメの声優は、たびたび知名度や人気度で選ばれてきた。
1999年の2Dアニメ『アイアン・ジャイアント』では、とくにふさわしいというわけでもないのに主人公の母親役を人気女優のジェニファー・アニストンが務めたが、
CGアニメの競争が激化してからはますます大スターがキャラクターの声を当てる傾向が強まった。

 それを最も促進したのは、ジェフリー・カッツェンバーグ率いるドリームワークス・アニメーションだ。
彼らはほぼ人気度や知名度だけを最大の基準に声優を決めてきたと言ってもいい。

(中略)
 しかし、2016年に大爆発した「#OscarsSoWhite」運動がハリウッドの白人偏重を、2018年が明けるとともに始まった「#TimesUp」運動が女性差別を指摘してから、
業界には、映画やテレビにマイノリティや女性の優れたキャラクターをもっと出すようプレッシャーがかけられてきた。
その結果、白人がすべての役を独占することは、過去に比べれば少し難しくなってきている。


全文ソース
https://news.yahoo.co.jp/articles/b5e8ef33cb69182d6d0e51a71e742d22a1141be2?page=1