「死んでたかもしれん」。同町佐敷の夫婦はおびえた表情で語った。未明に防災無線の音で目が覚め、窓から外を見ると自宅前の道路は川のようになっていた。家の中にも浸水。胸まで漬かり、脚立の上で夜が明けるのを待ったという。コロナの感染防止のため外出は控えていたが、妻(68)は「感染は怖いけど避難せざるを得ない」と話した。
同町花岡の三浦喜八さん(70)、久子さん(69)夫婦も胸まで漬かりながら避難。ガードレールにつかまりながら命からがらたどり着いたという。久子さんは「こんなに浸水したのは初めて。コロナ感染も心配だけれど、そうは言っていられないくらい水の勢いが怖かった。お年寄りも多いし、避難所で感染が広がらなければいいけど」と声を落とした。
町内のグループホームからは80〜90代の入所者約10人が避難した。介護士の中浦まゆみさん(59)は、1人で入所者全員をテーブルなどの上に避難させたという。中浦さんは「感染も心配だが、何よりもまず命が先。何とかみんなを無事に避難させられてよかった」と話した。 (小川勝也)
エコノミー症候群に注意
多くの人が身を寄せ合う避難所はもちろん、在宅避難であっても、エコノミークラス症候群の予防を心掛ける必要がある。
同症候群は、窮屈な姿勢で寝ていると主にふくらはぎの静脈に血の塊ができ、それが肺に達して血管を詰まらせると、死亡することもある恐ろしい病気だ。
予防にはまず、小まめな足の運動だ。ふくらはぎのマッサージ、爪先の上げ下げ、足首回しなどで血流を良くする。次に、血液が固まりやすくならないよう適宜、水分補給を。ただし利尿作用のあるカフェインやアルコール入りの飲料は避ける。女性は共同トイレへの抵抗感から水分摂取を控えがちで、患うリスクが男性より高いとされる。
熊本地震のときは、一晩の避難で発症して亡くなったケースもあった。避難生活を共にする人同士、特に高齢者に気配りしながら健康管理に努めてほしい。 (特別編集委員・長谷川彰)
西日本新聞 2020/7/5 6:00
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