7/5(日) 7:10
時事通信
 
 一括か、定期払いか―。

 交通事故で重い障害が残った場合、将来得られるはずだった「逸失利益」の賠償方法が争われた訴訟の上告審判決が9日、最高裁で言い渡される。一、二審は被害者側が求めた定期払いを命令。最高裁は結論変更に必要な弁論を開いておらず、命令が維持される見通しだが、賠償方法が最高裁まで争われたのは初めて。判決では、賠償の在り方をめぐる初判断が示される可能性がある。

 原告の男性(17)は4歳の時、北海道の市道を横断中に大型トラックと衝突。重い脳機能障害で「生涯働くことはできない」と診断され、運転手や保険会社に損害賠償を求めた。

 法曹関係者によると、後遺障害による逸失利益の賠償方法は民事訴訟法に明文化されておらず、保険実務や司法の現場では、一括で支払う「一時金賠償」が原則と考えられてきた。だが、男性側は毎月一定額を受け取る「定期金賠償」を求めた。

 定期金賠償では、障害が重くなるなどした場合、被害者側は増額を申し立てることができる一方、保険会社にとっては長期的な支払いの管理が必要になるなどのデメリットがある。

 保険会社側は賠償方法を争ったが、一審札幌地裁は「被害者側が望めば定期金賠償は可能」と判断。事故がなければ就労可能だった18〜67歳まで、毎月約35万円を支払うよう命じ、二審札幌高裁も「男性側の請求は、後遺障害や賃金水準の変化に対応可能な定期金賠償の特質を踏まえた正当なもの」と追認した。

 定期金賠償には、将来の利益に対する賠償金を先払いする一時金賠償では差し引かれる利息が控除されない特徴もある。男性側代理人の青野渉弁護士は「被害者の選択肢が広がるような判断を望む。定期金賠償は、保険会社と一生関わらなくてはならない一面はあるが、被害者の状況に見合った合理的な賠償方法だ」と語った。 

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