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産経新聞
1個1万円、食べられないのに人気の「四角スイカ」 国の“お墨付き”も
ディスプレー用として人気を集める四角スイカ=6月24日、香川県善通寺市
 さいころのような形をした「四角スイカ」の出荷が始まった。香川県善通寺市で栽培される、一辺が約18センチの立方体のスイカで、食べられないのに人気だ。約50年前、他の産地との差別化を図るため「冷蔵庫に入れやすい形に」と地元農家が開発を始めたが、ユニークな見た目からディスプレー用としてもてはやされるようになった。昨年には、国の「地理的表示(GI)保護制度」に登録され、手厚く保護されることになった。

【写真】出荷する四角スイカにシールを貼る生産者

 ■海外にも出荷実績

 6月24日午前、同市のJA香川県筆岡集荷場に200個余りの四角スイカが次々と運び込まれた。軽トラックの荷台に並んだ四角スイカは、1個ずつ念入りにスポンジでくるまれていた。生産者の女性は「運ぶ途中に傷がつかないように」と理由を説明する。

 生産者は、しま模様が縦にまっすぐ入ったスイカの表面に傷がないか確かめ、シールを貼って箱詰めした。パンフレットや飾り用のリボンも添えた。

 同市の筆岡地区を中心に栽培されている四角スイカは「縞(しま)王(おう)」という品種。実が熟す前に収穫するため、甘みが少なく食用には向かない。百貨店や大手果物店のディスプレーや観賞用として好評を博している。過去には、カナダやロシア、クウェートなど海外にも出荷された。

 卸売価格は1個1万円程度。関東や関西を中心に、7月中旬までに約400個の出荷を見込んでいる。

 ■どうやって四角にするのか

 同市は温暖で雨が少なく、スイカの栽培に適している。四角スイカは約50年前、冷蔵庫で冷やしやすい形のスイカを目指し、開発が始まったという。JA香川県善通寺西瓜(すいか)部会長の山下敏行さん(72)によると、当初は食用を想定していた。だが、市場関係者から「観賞用として売り出した方がいい」とアドバイスを受け、山下さんの父親ら地元農家が栽培技術を確立した。

 四角スイカを作るには、普通のスイカに比べて手間がかかる。ある程度の大きさになったスイカを、プラスチックと金属製の立方体の容器に入れて10日ほど成型。生育状況を見極め、慎重に容器を外すと四角スイカが登場する。きれいな形になるのは8割ほどだ。

 今年は7軒が栽培している。山下さんの畑では3月に苗を植え、6月上旬に収穫がスタート。収穫した後は1週間ほど様子をみて、傷みや病気がないものだけを出荷する。今年は大型連休の頃に昼と夜の寒暖差が大きかったものの、品質は「ほぼ例年並み」という。

 ■国の“お墨付き”

 四角スイカは、同市のふるさと納税の返礼品にも採用されている。令和元年度は、4万円を寄付した3人に四角スイカを贈った。市政策課によると、来年度も返礼品にする予定といい「特産品として積極的にPRしたい」としている。

 昨年6月には、地域特有の農産物や食品を国がブランドとして保護する「地理的表示(GI)保護制度」に「善通寺産四角スイカ」として登録された。すでに登録されている「夕張メロン」「神戸ビーフ」などと同様、手厚く保護される。国の“お墨付き”を得て販売できるため、付加価値が高まると期待される。

 空調のよい場所に置き、必要以上に触らなければ1年以上飾ることも可能という四角スイカ。山下さんは「新型コロナの影響で気分が落ち込みがちだが、四角スイカを見て楽しんでもらえたら」と話した。

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