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産経新聞

 「農村の声を国へ」 長野・長和町長が農水省検討会委員に
農林水産省で開かれた「新しい農村政策の在り方に関する検討会」。奥のテレビ会議画面に羽田町長が映っている=6月30日
 人口減少時代の新たな農村政策を考える農林水産省の有識者検討会の委員に、長野県長和(ながわ)町の羽田(はた)健一郎町長(73)が選ばれた。全国926町村を束ねる「全国町村会」を代表する立場での参加。羽田町長は今月2日、東京都内で取材に応じ、「農村の現場の声を国に伝えたい」と抱負を語った。

 検討会は、今年3月に国の「食料・農業・農村基本計画」が5年ぶりに見直されたことを受け、地域政策の具体策を探るため5月に設置された。羽田町長は全国町村会の経済農林委員長を務めることから、10人の委員の一人に選ばれた。

 5月19日にテレビ会議で開かれた初会合では、「うちの町は、中山間地域の代表的な地域」と前置きし、担い手育成と農地集約について「シカやイノシシの獣害で営農意欲が衰えている」「新規就農者の住環境や初期投資が足りない」など8つの課題を挙げた。

 羽田町長は「小さい町なので、若手農業者たちの生の声がびしびし入ってくる。そうした声を国に伝えるのが私の仕事」と話す。

 ■それでも人口減

 合併前の旧村時代から通算して7期23年間、村長・町長を務め、子育て支援に力を入れてきた。子供の医療費を他に先駆けて18歳まで無料化。小中学校の給食費も無料。町に高校がないため、隣接する上田市などへ通学したりアパートで下宿せざるを得ない生徒のために、通学費など年間最大12万円を補助。「子育て世帯向けマンション」を5年間で7棟60戸建設、3LDKで家賃は3万5千円。

 一方で、町の人口は平成17年の合併時の7300人が10年後の27年は6170人、現在は5900人。

 「これだけやっても、人口はどんどん減っていく。人口減少問題を地方自治体で解決するのは非常に難しいと思います」と羽田町長は訴え、こう続けた。

 「国全体の人口が減っているのに、都市から来てもらえばよいという問題でもない。ここは国の政策の大転換を期待したい」

 ■密でない農村へ

 新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、5月、6月の有識者検討会にはテレビ会議で参加。今月2日、2月12日以来4カ月半ぶりに上京し、全国町村会のメンバーと農水省や林野庁、水産庁に要望して回った。

 新型コロナをめぐっては現在、人口が密集する都市部と比べて「低密度」な農村が再評価されている。羽田町長は「『過疎地だから』と言われているようで複雑な気持ちだが、それでもぜひ、うちの町に来て、住んでほしい」と話した。

 長和町 長野県中央部、旧中山道の宿場町の面影が残る高原の町。平成17年、長門町と和田村が合併して誕生した。特産は黒耀石。町の歌「美しい町に住む人は」は林真理子さん作詞、三枝成彰さん作曲。

 羽田健一郎氏 昭和21年、旧和田村生まれ。中央大卒業後、親類の羽田孜元首相秘書を27年近く務めた。平成9年に和田村長初当選、3期。17年に長和町長初当選、現在4期目。31年から長野県町村会長。

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