「蒸発していくように仕事がどんどんなくなっていった」 こう話すのは、ある大手自動車部品メーカーの役員。新型コロナウイルスの世界的な感染拡大で自動車の生産が落ち込み、部品の供給網=サプライチェーンも大きな影響を受けています。こうした中、自動車部品とは全く異なる、ちょっとユニークな製品を開発して、サプライチェーン間で“仕事シェア”で苦境を乗り切ろうという動きが出ています。(さいたま放送局記者 清有美子)
仕事が蒸発… 部品以外にも目を 仕事が蒸発… 部品以外にも目を
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新型コロナウイルスの感染拡大で全国に緊急事態宣言が出された4月。さいたま市に本社がある自動車部品メーカー「マレリ」では、取引先の自動車メーカーの減産に伴い、世界150の生産拠点のうち一時、99拠点の操業を止めるなど、生産に深刻な影響が出ていました。
こうした中、従業員の一人が、新規事業などを担当する石橋誠常務に「社会のためになるようなものが何か作れないか」と提案しました。
部品メーカーは本来、自動車メーカーと一緒に製品を開発したり、注文を受けて製造したりするのがメインで、このメーカーでは車に関係ないものを独自に作ったことはありません。
しかし、石橋常務は即決してプロジェクトチームを立ち上げました。
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(マレリ 石橋誠常務)
「2月ごろから蒸発していくように仕事がどんどんなくなっていきました。『ものづくり企業』にとって作るものがなくなることほどつらいものはないし、現場の士気も下がります。緊急事態でしたし、幸い、会社にはさまざまな技術を持った人材がそろっている。とにかくできることを何でもやってみようと考えました」
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“猫の手も借りたい” そんな人のために
プロジェクトチームのメンバーでふだんは自動車の内装などを担当するデザイナーたちが注目したのは「GO OUT(外出)」支援でした。
当時、全国的に「STAY HOME」が求められ、家で快適に過ごすための商品やサービスはすでにいろいろ出ていましたが、医療従事者など“現場”に行かなければいけない人たち、「GO OUT」が求められる人たちへのサポートが十分ではないと考えたのです。
リモートワークでテレビ会議を重ね、アイデアやデザイン案を持ち寄りながら「外出時に公共交通機関のつり革をつかむことに抵抗がある」という意見から、不特定多数の人が触る場所に直接、触れずに済むための製品を開発することを決めました。
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発案から約1週間で、指を曲げたような形状のヘッドがついた柄に、握りやすいようだ円形の持ち手がついた試作品を3Dプリンターで作りました。
当初は持ち手部分のだ円形の球体に顔を彫り込み「グリップボーイ」という名称にしようと考えていましたが、話し合いを進める中で、感染拡大が続く最中も「猫の手も借りたいほど忙しく働く人をサポートする」という意味を持たせて、持ち手部分を猫の形にしたらどうかというアイデアが出ました。
そこで、どのような形にすれば猫らしく見え、金型も簡単に作れるか、つり革をつかんでも壊れない強度を持たせるためにはどのような素材を使い、形状にするかなど、部品生産のノウハウが生かされました。
そして発案から1か月半で、金型を製造し、生産工程を決めたり商品のパッケージを作ったりするところまでこぎ着けました。
公共交通機関のつり革をつかんだり、エレベーターのボタンを押したり、ドアを開けたり… “猫の手”のアイデア商品です。
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自動車部品の開発から製造には通常、少なくとも2年はかかるので、部品メーカーにとっては異例のスピードでした。
“仕事シェア” そのねらいは
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全文は下記URLで
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