新型コロナウイルスの影響で中止続きだった民放キー局(日本テレビを除く)の社長定例記者会見が約三カ月ぶりに再開した。

各局ともおおむね四、五月の「ステイホーム」期間中、視聴者の在宅率が上がり多くの人に見られていたが、
根幹であるCM収入は大ダメージとなる衝撃的な数字を記録したという。

「精査はしていないが、過去最大クラスだろう。われわれは普通、2%や3%下がったら『大変だ!』と言っているのに、
それが30%や40%も落ちているわけですから」。八日のTBSの定例会見で、佐々木卓(たかし)社長はCM収入についてこう言及した。

テレビCMには、番組と一体となった枠で放送し、特定の視聴者層に見てもらいやすい「タイムCM」と、
番組の合間などさまざまな時間に流される「スポットCM」がある。

TBSによると、同社の四月のスポットCM収入は前年比で77%台、五月が59%台だったという。

新商品のキャンペーンなど機動的に使われるスポットCMは景気などの影響を受けやすく、外出自粛が続いた五月は各局とも約30〜40%と大幅に下落した。
化粧品、外食、レジャーなどの業種でCM出稿量の落ち込みが目立った。

日本テレビは五月に報道陣の質問に答えた文書で、新型コロナのCMへの影響を「リーマン・ショック時以来の減収」と回答。
フジテレビの遠藤龍之介社長も七月二日の会見で、「リーマンや東日本大震災より影響を受けている」との認識を示した。
松村一敏常務は「広告主の経済活動の停滞や業績の悪化、CMの新しい素材が作れないことなどが重なった」と分析した。

そもそも近年、インターネット広告の伸びや若者のテレビ離れなどが影響し、特にスポット収入は下落傾向が著しい。
キー局五社が五月に発表した二〇一九年度決算は広告収入が低迷し、全局とも減益となった。

各局は映画やイベントなど放送外収入を増やすことに力を入れていたが、コロナ禍で映画の新作公開が遅れたり、
展覧会が中止になったりと、こちらも逆風が吹いている。

日テレ、テレビ朝日、フジの持ち株会社(ホールディングス)三社は、新型コロナ感染拡大の影響の算定が難しいとして、二〇二一年三月期の業績予想を「未定」とした。
TBSとテレビ東京のホールディングス二社は売上高減を見込んでいる。

六月に就任したテレ東の石川一郎社長は、七月二日の会見冒頭のあいさつで「構造的な問題も、新型コロナの問題もある。
世の中が大きく変わる状況の中、テレビ業界も昔と同じことをやっていては生き残れないのではないか」と危機感を語った。

※日テレは例年、六月の定例会見がなく、七月二十七日に会見を開く予定。

■民放キー5局 5月のスポット CM収入

日本テレビ 未発表
テレビ朝日 58.7%
TBS 59%台
テレビ東京64.7%
フジテレビ57.5%

※前年同期比
https://www.tokyo-np.co.jp/article/41753