CPUなどの半導体製品を製造するメーカーは、自社で製造ラインを保有している場合もありますが、AMDのようにTSMCなどのEMSに製造を委託している場合もあります。通常、半導体チップの製造をEMSに委託する際は設計ソフトの購入費用などがかかりますが、そうしたソフトをオープンソースにして無料化するプロジェクトをGoogleが支援しています。

GitHub - google/skywater-pdk: Open source process design kit for usage with SkyWater Technology Foundry's 130nm node.
https://github.com/google/skywater-pdk

Produce your own physical chips. For free. In the Open.
https://fossi-foundation.org/2020/06/30/skywater-pdk

If you wanna make your own open-source chip, just Google it. Literally. Web giant says it'll fab them for free ? The Register
https://www.theregister.com/2020/07/03/open_chip_hardware/

google/skywater-pdk - Manufacturable Open Source 130nm PDK - Google スライド
https://docs.google.com/presentation/d/e/2PACX-1vRtwZPc8ykkkgtUkHkoJZrP9jKOo3FYdKqbg-So0ic6_kx7ha1vHnxrWmuxWkTc9GfC8xl0TfEpMLwK/pub

半導体を設計するメーカーは、半導体製造の依頼先であるファウンドリから「Process Design Kit(PDK)」と呼ばれる開発キットを購入するのが一般的です。PDKとは、ある特定の半導体プロセスで回路設計を行う際に利用する設計情報をまとめたもの。例えばTSMCは車載IC向けの7nm製造プロセスに最適化したPDKを提供しており、車載ICの設計を行うメーカーがTSMCの7nmプロセスを利用してチップを製造したい場合は、このPDKを購入して設計を行うというわけです。

半導体領域におけるオープンソースプロジェクトと言えば「RISC-V」が有名ですが、オープンソースのPDKは今まで存在していなかったとのこと。さらに、半導体ファウンドリが提供するPDKは高価であることが知られています。しかし、Googleと半導体ファウンドリの「SkyWater」が協力し、業界初となるオープンソースのPDKを公開したことで、状況は一変。GoogleがGitHubに公開している下記のPDKを用いると、SkyWaterの130nmプロセス「SKY130」で半導体チップの製造を行うための設計を無料で行うことが可能になると、半導体業界のオープンソースを推進する「The Free and Open Source Silicon Foundation(FOSSi)」のディレクターであるフィリップ・ワグナー氏は説明しています。

GitHub - google/skywater-pdk: Open source process design kit for usage with SkyWater Technology Foundry's 130nm node.
https://github.com/google/skywater-pdk

さらに、Googleは半導体企業のefablessにも出資。efablessはMulti-project wafer(MPW)と呼ばれる、ひとつのウェハー上に複数の回路を混在させて製造する技術を用いてチップを試作する「シャトルサービス」を無料で提供する予定とのこと。このプロジェクトはすべてのオープンソースのチップ設計が対象であり、2020年11月には40のプロジェクトに対してサービスを提供できると予告されています。

記事作成時点では、SkyWaterのSKY130用PDKはアルファ版となっており、今後機能が追加されていくとのこと。ワグナー氏はPDKのオープンソース化について、FOSSiで何年にもわたって取り組んできた大きな課題を解決することができる、夢のようなプロジェクトだと語っています。

https://gigazine.net/news/20200711-google-skywater-opensource-pdk/