昔、こどもの頃

北海道、道東の沢を、地元の方々と一緒に渓流釣りに行った
彼らの仕事は測量士で、屈強で、いかにも山の男のよう
冗談好きで、いつも笑顔で大酒飲み
夜は焚き火をしながら釣ったオショロコマやフキやら料理してくれた
帰路、連なって沢沿いの道を大人達はワイワイ言いながら歩いていると
突然、自分の全身の毛穴が開き、後頭部に向けて皮膚を引っ張られ
ゾワゾワゾワっとしたとたん、沢の音が消えるような体験をした
皆にそのことを話しても、誰も見向きもせず、黙ったまま、歩くばかり
自分は仲良くしてくれた大人達に無視されたのがショックだったが
数分経つと、またワイワイ冗談をいいながら普段の大人達にもどっていた

駐車場に戻った時、さっきの不思議な体験を話すと、大人達は少し真顔になってから
皆「出たね!」「あぁ出た出た!」「近かったなぁ!」「直ぐ隣だった!」と
俺の頭をガシガシなでながらゲラゲラと笑っていた

自分が大人になって、山深くで渓流釣りをしていると、沢の音が突然消える時があり
ふと、こどもの頃を思い出し怖くなる