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宮崎県種雄牛 精液が流出 7道県へ 海外転売の恐れ

宮崎県の県有種雄牛「耕富士」などの精液が、不正に県外へ流出していたことが、県への取材で分かった。家畜人工授精師が必要な精液証明書を添付せず、7道県の授精師に渡していた。県は当該の授精師4人を家畜改良増殖法に基づき3カ月〜1年の業務停止処分にした。本来は宮崎県内でしか使えない精液だった。専門家からは、精液が不当に海外へ流出していないか懸念する声が出ている。
 
 県によると2016〜18年、授精師の1人が、精液ストロー約120本を精液証明書を付けずに県内の別の授精師に譲渡した。その中には、県を代表する種雄牛「耕富士」「満天白清」のものが含まれる。受け取った授精師は、このうち約40本を2人の授精師に渡した。そこから北海道などの人工授精師にさらに精液が渡ったもよう。

 家畜改良増殖法では、証明書なしに精液を譲渡、使うことは禁止されている。県は「違法性を認識した上で授精師は譲渡していた」(家畜防疫対策課)とみる。

 県は、県種雄牛の精液使用を県内に限っている。管理・供給するのは県家畜改良事業団。不正流出を防ぐため、11年にはスマートフォンなどを活用して精液の使用状況を随時報告するシステムができた。事業団が供給した精液のうち、不使用のものは在庫扱いになり、使用実態の把握は難しいという。県は「(不正譲渡は)各授精師のモラルの問題だが、精液の管理システムを見直す必要がある」(同)と話す。

 和牛精液の流通に詳しい、神戸大学大学院の大山憲二教授は「証明書を添付せずに流出した精液で生まれた子牛を、繁殖もと牛として国内で登記することは難しい」と指摘。「最も懸念されるのは海外流出の可能性だ」と警鐘を鳴らす。

 農水省は、家畜遺伝資源の不正競争防止法を今秋に施行予定。精液などを不正に取得、利用した場合の刑事罰化や差し止め・損害賠償の請求措置などを盛り込む考え。

2020年07月14日 日本農業新聞