香港国家安全維持法(国安法)違反の容疑で10日に逮捕され、11日夜に保釈された香港の民主活動家、周庭(しゅう・てい)氏(23)が記者団の取材に応じた。保釈後も取り調べは続く予定で、今後も「民主の女神」には厳しい道が待ち受けている。

香港警察が国安法を使って取り締まりを強化する背景には、中国の習近平指導部の強硬姿勢がある。周氏ら知名度が高い著名人を狙い撃ちして逮捕することで「中央政府には逆らえない」という恐怖感を市民に植え付ける狙いがありそうだ。

周氏には保釈後も警察当局が起訴に向けて捜査を続けるという。違反したとされる国安法は6月に中国の全人代(全国人民代表大会)常任委員会で可決され、施行されたばかり。「香港デモ戦記」(集英社新書)の著者でジャーナリストの小川善照氏によると「この法律の裁判は前例もなく、今後彼女がどのように裁かれるか不透明」という。同法では、違反者の中国への移送も可能とされている。

周氏が保釈後について「国際社会と連携する活動には参加できない」とした点も「海外と呼応して国家安全に危害を及ぼしたとみなされると、最低で懲役10年となる」(小川氏)と同法を意識してのものとみられる。7月以降、政治活動への参加やツイッターへの発信もやめていたにもかかわらず、逮捕されたことに「市民は驚いている」と小川氏は語る。

一方、保釈は逮捕からわずか1日後と早いものだった。香港の法律では国家の安全に危害を加える行為を継続しない十分な理由があれば、逮捕後48時間以内に保釈が認められる。小川氏は「香港の法律が適用された。中国の基準では保釈されない可能性すらあった。何をしたら逮捕されるのかという基準が分からない」とし「北京や香港警察の考え方次第になっている」と語る。不透明な部分が増え、精神的な圧力を危惧する声も上がっている。

[ 2020年8月13日 05:30 ]
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