大阪都構想の「最悪のシナリオ」は隠蔽されている 2019/11/16

大阪市を廃止して四つの特別区に分割する「大阪都構想」の議論が大詰めを迎える中、特別区の運営が破綻する懸念が浮上してきた。
現実は、財政的に困窮した特別区は住民サービス削減に迫られ、市民生活はレベルダウンする可能性が高い。
この「最悪のシナリオ」を、「大阪維新の会」だけでなく行政ぐるみで隠蔽したまま、大阪市廃止に向かう手続きを進めている。

各特別区の運営に最低どれぐらいの費用が必要なのか、自治体運営の基本である「基準財政需要額」が計算されていないというのだ。
2017年9月、法定協議会に提出された特別区素案では、「分割コスト」は年41億〜48億円と試算しているが、これはシステム運用経費の増大分や、特別区庁舎として新たに民間ビルに間借りする経費で、分割コストの一部に過ぎない。
全体像を知る手掛かりとなる「基準財政需要額」について、副首都推進局は計算するのを避けてきた。

大阪都構想は「大都市制度改革」とされているが、行政改革ならば、大阪市を廃止して設置する4特別区の基準財政需要額を算出したうえで、現在の大阪市の基準財政需要額と比較をし、「特別区になった方がいいのか、政令指定都市の大阪市のままの方がいいのか」を検討するのは当然のことである。
特別区は政令市のような権限もなく財源も乏しい。
大阪府から財源を融通してもらって運営するという危なっかしい構造の基礎自治体なのだから、「特別区の財政がどうなるのか」は、はっきりさせておかなくてはならない。

しかし、2013年2月から始まった大阪都構想の法定協議会では、一度たりとも具体的な基準財政需要額が議論の俎上に上ったことはない。
「大阪維新の会」の委員らは、新しく作る特別区という基礎自治体が運営していけるか否かの根本的な部分を議論の対象から外し、
「特別区長は選挙で選ばれるのだからしっかり運営するはずだ」などと特別区長に責任を集約する主張をしてきた。

家計に置き換えれば、4人家族が一緒に暮らしていたところ、4人バラバラに分かれれば生活費は高くつくということになるだろう。
基準財政需要額の増大が深刻な問題なのは、増大分が国の地方交付税で補填されないことだ。
国の方針で進められた市町村合併と違い、「大阪市の廃止・分割」は大阪府市独自の自治体再編なので、行政コストが増大しようが、特別区庁舎の建設が必要になろうが、その費用にはいっさい国の援助はない。財源の乏しい特別区が自らの責任で何とかするしかなく、住民生活にそのしわ寄せが行くのは明白だ。
https://news.yahoo.co.jp/byline/koudaizumi/20191116-00151084/