<異論点検 安倍政治 2つの党首選から 〜 岸田氏編>
 
 「成長の果実が(富裕層からの)トリクルダウンという形で中間層や中小企業、地方に広がらないうちにコロナの影響を受けた。それによって格差(拡大)が深刻化してしまった」

◆アベノミクス富裕層に偏り
 自民党の岸田文雄政調会長は、12日の日本記者クラブ主催の公開討論会で、安倍政権が進めた経済政策アベノミクスの恩恵が大企業や富裕層に偏っているとの問題意識に真っ先に言及した。
 この7年8カ月余りにわたり外相、政調会長という内閣と党の要職を歴任した岸田氏は、一貫して安倍晋三首相を支えてきた立場。「アベノミクスは高く評価している」と強調する。
 にもかかわらず、税制や住宅・教育支援を通じた中間所得層の底上げを主張する。企業業績や雇用環境の改善という成果の一方、富の偏在が社会のひずみを生み出したという危機感を抱いているからだ。討論会では、競争原理が強く働く新自由主義に否定的な考えを示し「一部の(層の)利益の独占ではなく、国全体の利益を大きくする。個人に優しく、公益にも資する持続可能な資本主義を考えなければならない」と踏み込んだ。

◆安部首相の政治手法に疑義
 総裁選で掲げた「分断から協調へ」のスローガンについて、岸田氏は「国内では格差問題、国際社会では自国第一主義」などを念頭に置いたと説明する。言外には、世論を二分した安全保障関連法や特定秘密保護法などを、半ば強引に成立させてきた安倍首相の政治手法への疑義もにじむ。
 これまでの演説や記者会見では「反対する声をしっかり聞き、どう活用するかが政治家の力量」と繰り返し訴えてきた。11日に発売された初の自著のあとがきには「リーダーは自らが光り輝くためにあるのではない。リーダー以外の全員を輝かせるためにある」と記した。首相やその周辺など、ごく限られたメンバーが政策を決める官邸主導のトップダウン型では、多様な民意を反映した政治はできないと警鐘を鳴らしているようにも見える。
 岸田氏は11日朝、JR新橋駅前でマイクを握り、総裁選で初の街頭演説に臨んだ。行き交う通勤客に訴えたのはリーダーとしての心構え。首相の権力行使を間近に見てきたからこその「告白」にも聞こえた。
 「権力は鋭い刃のようなもの。謙虚、丁寧に使っていかなければならない」(川田篤志)

東京新聞 2020年9月13日 06時00分
https://www.tokyo-np.co.jp/article/55236
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