https://news.yahoo.co.jp/byline/tanakaatsuo/20200914-00198207/

今、「森林購入」がブームだそうである。それもプライベートキャンプ場をつくるのが目的だという。

テレビ番組や新聞などがこうした話題を相次いで取り上げている。私のところにも何かとコメントを求める申し込みがやって来る。

ただ私が「素人が森林を買う」ことの問題点やデメリットを説明しても、ほとんど採用されない。あくまで明るい話題として「森林購入」を取り上げたいのだろう。

たしかに今年になって森林を買いたいという人が増えたのは事実らしい。どうやら芸能人のヒロシが、
自分で山を買ってプライベートキャンプ場づくりをしていることをユーチューブで配信したことがきっかけだとか。
そして、思いがけず森林が安いことを知る。何千坪の土地がせいぜい数十万円なのだ。これなら自分の小遣いでも手が出るぞ、と気づいたのだろう。

意外と頻繁に行われた森林売買
 
せっかくだから、森林売買に関する事情の推移を紹介しておこう。

まず、これまでも山(もしくは森)の売買は、結構頻繁だった。先祖代々持っている山…ようなことをいう人もいるが、かなりの頻度で所有者が変わっている。
おそらく2、3代以上前から引き継いでいる森林は多くないだろう。

戦後は、木材価格が高騰したため森林の購入が多くなった。購入者は、当然山にある木を伐って売る、あるいは木を植えて林業を行うことを目的に購入するのだ。

だが林業が斜陽になり、木材価格も安くなると、森林売買も鎮静化する。

そんな時代に森林の売買というと、その山に道路や鉄道を敷く、工業団地やゴルフ場を建設するといった目的が多くなる。
最近では、メガソーラーを建設するケースもある。バイオマス発電の燃料としてすべての木を伐採して放置されることも起きる。
いずれも森を森でなくす使い道だ。そのため森林売買によいイメージがなくなってきた。

むしろ所有者が森を捨てる(相続や経営を放棄する)ことの方が話題に上がりやすくなってきた。

外資が森を奪う?原野商法も
 
2010年前後から、今度は「外資が日本の森を奪う」という声が突如出てきた。ようするに外国人・外国籍の会社が日本の土地を奪う
(もちろん正規の手続きで購入する)ことに危機感が出てきたのである。なかには「日本移住のため」「日本の水資源を狙っている」という推測(妄想?)が幅を利かせ始める。

実際に取材してみると、つまらないガセネタだった。山を買って水を取るというのも、非科学的である。もちろん森を購入する外国人も多少はいるだろうが、
たいてい別荘地とかその周辺の土地だ。むしろ「外資が森を奪おうとしているから日本人に買ってほしい」というネタで
山林プローカーが暗躍したというのが本当のところだろう。これは原野商法に近い。

そして今年になっていきなり「キャンプ場にするため」の森が買われ始めたというのである。これまでと違って、牧歌的な理由だけに、
マスコミも楽しいネタとして扱えると飛びついたか。だから楽しくない私のコメントは、カットされるのかもしれない(笑)。

甘くない草刈りや伐採
 
私は、何も一般人が森林を購入してそこでキャンプすることを否定したいのではない。キャンプを通して自然と親しむ機会が増えるのはよいことだ。
また下手なキャンプ場では、シーズンだと牛詰め状態で、見知らぬ他人の目を気にしたり、騒音などマナー違反も発生する。
それに木を伐ったり、たき火したりするにも制約があって難しい。その点、自分の土地で自由にキャンプ、というのは憧れだろう。

実は私も親戚から引き継いだわずかな山林を持っており、よく似たことをやっている。だから魅力は知っているつもりだ。

だが、森林を所有して利用しようとすると、甘くない事項がいろいろある。

ここで細かな山林に関する法律や税金の話は控えるが、たとえば建築物を建てるのは慎重にしなくてはならないなどの問題はある。

もっと身近な例で言うと、草刈りが大変。日本の山は、放置するとたいてい草ぼうぼう、低木がびっしり生えてブッシュになる。
それではキャンプもできない。だからせっせと刈らねばならないが、1か月もすればまた草ぼうぼうになる。もし月1のキャンプのつもりで購入すると、
行くたびに草刈りに時間を費やさないといけないだろう。

また木の伐採も慎重にやらないと、死傷事故につながる。チェンソーの事故は多いし、倒れる木を制御できずに人を傷つけることは非常に多いのだ。

野生動物や虫の大群の出現

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