暴力団員が一般市民に金銭を要求する事案が急増している。不当な金銭要求をしたなどとして、大阪府公安委員会は8月までに暴力団対策法に基づく中止命令を96件出し、昨年1年間の73件をすでに上回った。新型コロナウイルスは、暴力団の収入源とされる繁華街の飲食店営業を直撃。夏季イベントの中止で露店で稼ぐこともできない。資金獲得活動(シノギ)に窮した組員が、新型コロナ関連の支援金に狙いを定めて金を要求する事案も相次いでおり、警察が取り締まりを強化している。

コロナ支援金が標的

 「あんた俺に迷惑をかけているよな。新型コロナウイルスの特別定額給付金が入ったら、俺に回せや」

 特定抗争指定暴力団神戸山口組系幹部の男が6月、知人男性に給付金10万円を渡すよう迫った。男性は大阪府警に相談。府公安委が8月に幹部に中止命令を出した。

 新型コロナに乗じて、暴力団員が一般市民に金を要求する事案は多発している。特定抗争指定暴力団山口組系組長も5月、知人男性に、新型コロナの影響で生活が困窮した人に国が無利子で最大20万円を貸し付ける緊急小口資金を申請し、その金を渡すよう要求した。

 7月には、別の山口組系幹部が府内の飲食店の経営者に「コロナの影響で客も入らんし大変やろ。俺らが団体で使ったるわ」と迫り、コース料理の値引きを要求。いずれも府公安委が中止命令を出した。

急増する中止命令

 大阪府警によると、8月末時点で、府公安委が発出した中止命令は昨年1年間の73件を上回る96件。組織別では、山口組が59件と最多で、神戸山口組が22件と続いた。


 中止命令は、脅迫や暴行など刑事事件には至らなくても、暴力団の力を示して金銭を要求する組員を取り締まるために暴力団対策法で規定されている。

 同法では、みかじめ料や用心棒代の要求など27の行為を禁じている。中止命令を受けても組員が行為をやめない場合は、同法違反容疑で逮捕することも可能で3年以下の懲役や500万円以下の罰金に問える。

府公安委が8月までに出した96件の中止命令のうち、67件は市民に金銭を要求する行為が占めた。そのほか、住宅の賃料や公共料金の支払いを先延ばしにしようとした事案もあり、組員が金銭的に窮乏して一般市民に迫っている現状も浮かび上がる。

 ある捜査関係者は「山口組と神戸山口組が特定抗争指定暴力団に指定されてシノギが大きく制限される中で、新型コロナの影響が重なった。もともと先細りしていたシノギがさらに厳しくなり、さまざまな手段で金を得ようとしている」と危機感を高める。

全文はソース元で
https://www.sankei.com/premium/news/200916/prm2009160001-n1.html