新型コロナウィルス感染症対策において隔離が徹底されている理由は、「無症状者からも感染させることがある」という従来からの知見にあると推測されます。

ところが、これについては最近、「無症状者からの感染は非常に稀である」という研究結果が、
Ananals of Internal Medicineという権威ある学会誌に発表され注目を集めています。
(原文:Contact Settings and Risk for Transmission in 3410 Close Contacts of Patients With COVID-19 in Guangzhou, China)

この研究は中国広州での新型コロナウィルス初感染者391人とその濃厚接触者3410人を
2020年1月6日から3月6日まで追跡した大規模な調査結果を論文にまとめたものです。

結果は「3410人の濃厚接触者のうち、127人(3.7%)が2次感染し、初感染患者の重症度が増すにつれて2次感染率は高くなった。
無症状患者からは0.3%、軽症患者からは3.3%、中等症患者からは5.6%、重症患者からは6.2%の感染率であった」というものでした。

この論文の著者たちは、「新型コロナ患者からの2次感染は比較的少ないことがわかった」
「より重い症状を持つ新型コロナ患者が高い感染力を有している一方、無症状者からの感染力は非常に限定的であることがわかった。
これは2月にWHOが出した(同様の)レポート結果に合致している」と結論づけています。

この研究結果は、今までの無症状者からの感染を警戒し、厳重に隔離対象としていた国々の対策に大きな一石を投じるものです。

またPCR検査の鋭敏すぎる感度による偽陽性率の高さも問題になっています。
PCR検査で見つかった陽性者のうち実際に感染力があるのはわずか10%程度です。

アメリカ疾病対策センター(CDC)でも、さまざまな議論があったようですが、現状で無症状者については
「6フィート(約183センチメートル)以内の距離で少なくとも15分以上の濃厚接触者」にしか検査を推奨していません(Considerations for who should get tested)。

日本の一部メディアでは「アメリカでは検査して隔離が常識」と誰でも検査を受けているように書いていますが、事実ではありません。

大変興味深いことに、「ロックダウンは科学的エビデンスがない」として行わなかった国、スウェーデンでは、集団免疫がほぼ獲得されてコロナ感染が収束し世界で注目を集めています。
現地在住の医師・宮川絢子先生に伺ったところ、スウェーデンでは「無症状の人は一貫してPCR検査をしていない」そうです。

「濃厚接触者においても、症状がなければ基本的に検査はしていない」とのことでした。例外は介護施設勤務者であるなど特別な場合です。

つまり症状のある人だけがPCR検査を受け、本当に治療の必要な人のみが入院し、陽性でも軽症ならば自宅療養になる。
濃厚接触者になっても無症状の人は、ソーシャルディスタンスをとることを推奨されるのみで、基本的には仕事や学校に普通に行けるとのことでした。

今後、家庭内での濃厚接触者に対しては扱いが変わる可能性があるそうですが、いずれにせよ日本と比べて圧倒的に隔離対象になる割合も少なく、医療機関にも無駄な負担がかかりません。

日本はスウェーデンに比べて死者の総数が約5分の1であるにもかかわらず、国民の不安や恐怖感は比べ物にならないほど大きく、
クラスターが発生すると大学や会社が謝罪して感染者は非常に肩身の思いをさせられます。

地方では露骨な迫害が発生しています。これはコロナウィルスそのものによる恐怖だけではなく、「隔離・制裁恐怖」によるところが非常に大きいように思われます。

今後は世界の動向とともに、日本でも新型コロナ対策がどんどん見直されていくものと思われますが、
国民に蔓延している「隔離・制裁恐怖」が解消される事を願ってやみません。
https://toyokeizai.net/articles/-/375545?page=4