相次いで行われた自民党と野党の合流新党の党首選は、いずれも女性候補が不在だった。自民党で女性候補がいたのは、東京都の小池百合子知事が衆院議員時代に出馬した2008年の総裁選だけだ。
 安倍晋三首相が8月28日に突然辞任を表明した後、自民党の野田聖子、稲田朋美両衆院議員らは、総裁選への出馬意欲を示した。だが、派閥の論理で進んだ菅義偉首相誕生への多数派工作に付け入る隙はなかった。永田町では「勝ち馬」に乗ろうとする雪崩現象が起き、野田氏らが出馬に必要な推薦人20人を確保するのは困難だった。
◆立ちはだかる「派閥の壁」
 総裁選の投開票があった9月14日。新総裁誕生の熱気に包まれた会場を後にした野田氏は冷めていた。記者団に囲まれ「ああいう大舞台に国民の半分である女性(候補)の姿がないことに常に私は違和感を感じる」と応じた。稲田氏は「自民党政治は男性がやるものという意識が抜け切れていない。それを打破するためにも女性候補が立ちやすい環境が必要」と話した。
 無派閥の野田氏に対し、稲田氏は安倍氏と同じ最大派閥の細田派に属するが、女性には派閥が壁として立ちはだかる。野田氏は「派閥を必要としない総裁選をやって、老若男女、自民党の志ある者がまずは予選に出るくらいの仕組みがあってもいい。総裁選を私たちの多様性を見せる場所にするべきだ」と訴える。
 お茶の水女子大の申h榮(シンキヨン)教授(政治学)は総裁選を見て「保守男性の保守男性による保守男性のための選挙」と感じたという。党員投票が省略され、国会議員の多くは自身の所属派閥の意向に沿って投票した。申氏は「女性は集団的な力を持ちにくく、派閥中心の男性政治が大きな壁になっている」と指摘する。
◆女性候補、声を上げにくい空気
 野党でも、新たな立憲民主党の代表選に女性候補の姿はなかった。旧国民民主党から合流した徳永エリ参院議員は「やりたいと声を上げる人がいないことが1つの問題」としつつ「やはり声を上げにくい空気はある」と指摘。徳永氏によると、党要職に就く女性議員は少なく、企業・団体とのつながりも含め、党内外で力は強いとは言い難い。
 抜本的な問題として長年、指摘されているのは、女性議員の圧倒的な少なさ。候補者の男女数を均等にするよう促す議員立法「政治分野における男女共同参画推進法」が18年に成立したが、与野党ともに改善へ向けた取り組みは鈍い。上智大の三浦まり教授らのグループは14日、解散総選挙を見据え、各党に女性候補を増やすよう求めるオンライン署名を始めた。
 「女性議員を本気で増やしてください! 衆議院の女性比率はたったの9・9%です。さすがに、まずくないですか?」との呼び掛けに、賛同者は10日ほどで2万人を超え、署名は増え続けている。各党は今度こそ、こうした声に誠実に向き合ってほしい。(坂田奈央)

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