■内閣総理大臣の任命は「形式的な任命」で任命拒否権は無い。とする完璧な法解釈。反論できる人はどうぞ■

日本学術会議法25条は
「内閣総理大臣は、会員から病気その他やむを得ない事由による辞職の申出があつ たときは、
日本学術会議の同意を得て、その辞職を承認することができる。」

また、日本学術会議法26条は
「内閣総理大臣は、会員に会員として不適当な行為があるときは、日本学術会議の 申出に基づき、
当該会員を退職させることができる」

と規定し、辞職も退職も学術会議の同意や申出を必要とし、内閣総理大臣単独では出来ない。
これは、日本学術会議法3条に規定する「学術会議の独立性」の結果である。

特に26条は重要で、会員に不適当な行為があっても、会議の申出がない限り内閣総理大臣は会員を
退職させることができない。これは、会議の独立性が強く、事実上の人事権は学術会議側にあることを
示すものであるから、就任時においても、会議の推薦に対して任命拒否は出来ないと解釈せざるを得ず、
日本学術会議法7条2項の内閣総理大臣の任命は「形式的な任命」と解釈することになる

これに対して、辞職や退職など会員を辞める場合と、会員に就任する場合は違うとの反論がある。
しかし、学術会議の「職員」の場合は、

日本学術会議法16条
3 前項の職員の任免は、会長の申出を考慮して内閣総理大臣が行う。

と規定し、内閣総理大臣は会長の申出は考慮するだけで、つまり、参考にするだけで会長の申出と
違う任命が出来る。
ところが、学術会員の場合は、専門性があるので、内閣総理大臣が判断できない。
だから、日本学術会議法7条2項は、学術会議の推薦に基づく任命になっている。
そして、わざわざ、職員の場合と文言を変えて「考慮」が入っておらず、「学術会議の推薦を考慮して
内閣総理大臣が任命する」とは規定してないのであるから、内閣総理大臣に考慮の余地はなく、
内閣総理大臣の任命は「形式的な任命」と解釈することになる。

従って、就任の場合も、考慮できない内閣総理大臣に人事権はなく、事実上の人事権は学術会議側に
あると言える。

これに対して、職員と異なり専門性があるから推薦されてない人を任命することはできないが、
憲法72条は内閣総理大臣は「行政各部を指揮監督する。」と規定していて、また、
国費が投入されている以上、内閣総理大臣が全く人事に介入できないのはおかしいから、
「考慮」が入っていなくとも、被推薦者の一部を任命拒否することは出来るとの反論がある。

しかし、そのような反論については、同じく公費で手当が支給される「連携会員」の場合は、
会長が任命すると規定していることの説明がつかなくなる。との再反論が可能である。
(尚、会員は特別職の非常勤国家公務員、提携会員は一般職の非常勤国家公務員。)

日本学術会議法15条
2 連携会員は、優れた研究又は業績がある科学者のうちから会長が任命する。

また、憲法72条の行政各部とは「省庁」を指すのであって、学術会議のような組織は対象でない。

更に、そもそも専門的な業績について判断できない内閣総理大臣が、他に何を判断する必要がある
と言うのか?必要性の乏しい裁量権を内閣総理大臣に認めることは、学術会議の独立性と相容れない。
また、必要性の乏しい裁量権を認めると、それを濫用して、例えば政権批判をした者を任命拒否したり
する恐れがあり、適切でない。

従って、日本学術会議法7条2項の内閣総理大臣の任命は「形式的な任命」と解釈することになる。