https://www.yomiuri.co.jp/editorial/20201201-OYT1T50254/
2020/12/02 05:00
18歳人口の減少に伴い大学の経営環境が厳しさを増している。合併や連携の強化で、経営効率を高め、教育の質の向上にも努めねばならない。
慶応義塾大と東京歯科大が2023年4月をめどに学校法人を合併し、東京歯科大歯学部を慶応大に統合する方向で協議を始めたと発表した。実現すれば、慶応大に医・歯・薬・看護の医療系4学部がそろうことになる。
1990年代初頭に200万人を超えていた18歳人口は、すでに120万人を割り込み、今後も減少が予想されている。合併構想にはブランド力を高め、経営基盤を強化する狙いがあるのだろう。
他大学の動向にも影響を与え、再編が加速する可能性もある。
今回のケースは、学生の人気が高く、経営も安定した大学同士の戦略的な合併だ。研究の相乗効果も期待されている。
問題は経営が苦しい大学の先行きだ。定員割れの私立大は全体の3割、短大は7割に上る。地方の中小規模校の経営悪化が深刻だという。全国の大学・短大は1000校を超えており、現状のまま維持するのは難しいと言えよう。
打開策が見いだせない大学や、危機感に欠ける大学も少なくない。改めて財務状況を見直し、合併や連携の道も探りながら、経営の効率化に努めてほしい。
特色を生かして、地域に貢献するなど、役割を明確にすることが大切だ。行政や企業の力も借り、教育や研究の魅力を高めたい。
学生を抱えたまま破綻するような事態は、絶対に避けねばならない。文部科学省も、財務状況が深刻な大学には、厳しく経営改善を指導する必要がある。
文科省は再編を促すため、私大間で学部を円滑に譲渡できるよう省令を改正した。地域の国公私立大をグループ化し、一体的に運営する制度の導入も進めている。
名古屋大と岐阜大の運営法人や大阪府立大と大阪市立大など国公立大も統合の動きが活発である。私大もこうした仕組みを活用し、個性や強みを生かすべきだ。
大学に求められる役割は、時代とともに変化している。グローバル化やIT化の進展で、文系と理系の枠を超えた文理融合型学部が増えている。社会人の学び直しも重要度が増してきた。
新型コロナウイルスの流行で、大学はオンライン授業の環境を整えた。近隣以外の大学とも連携を深める機会になろう。旧態依然の経営で生き残れないことは明白だ。改革は待ったなしである。