新型コロナウイルス感染拡大による経済悪化に対応するために政府は財政を急拡大し、2020年度の歳出総額は空前の175兆円に達した。
新規国債を合計で112兆円発行し、医療支援とともに個人、事業者向けの給付金や「Go To キャンペーン」などの景気浮揚策を実施。日銀も企業の資金繰り支援で足並みをそろえた。

 財務省幹部は今年を振り返り「財政規律は口にすることもできない雰囲気だった」と話す。
麻生太郎財務相は4月の記者会見で「財政健全化には経済成長が必要だ」と述べ、景気対策を優先する考えをにじませた。
その言葉通り、補正予算の編成は3次にわたり、歳出総額は過去最大だった19年度の101兆円を、新規国債発行額はリーマン・ショックの影響を受けて最大だった09年度の52兆円を、それぞれ上回った。

 しかし、かつてない危機に経済対策は迷走する。個人への給付金は当初、一部の減収世帯に限定する方針だったが、与党の反発で一律10万円の給付に転換。
売り上げが落ちた中小企業を支える「持続化給付金」は多額の事務委託費が問題視され、不正受給も続出。観光支援策「Go To トラベル」は感染再拡大で一時停止に追い込まれた。

 日銀は3月、新型コロナで業績が悪化し資金繰りに苦しむ企業への融資を促すため、金融機関に有利な条件で資金を供給する異例の支援策を導入。
同時に上場投資信託(ETF)の買い入れ強化を柱とする3年8カ月ぶりの追加緩和に踏み切った。4月にも国債買い入れの上限撤廃などを実施した。

 政府は今月8日、3次補正と21年度予算などを合わせ、民間投資を含めた事業規模で73兆6000億円の追加経済対策を決定した。
日銀も企業の資金繰り支援を来年9月末まで延長。財政、金融政策を総動員した危機対応が21年以降も続く一方で、財政健全化や大規模金融緩和の「出口」は全く見通せない。

https://www.sankeibiz.jp/macro/news/201230/mca2012300753001-n1.htm

参考:一般会計の歳出と税収、国債発行額の推移
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