>MMT理論の大きな問題点は、
>「自国通貨建て政府債務はデフォルトすることはない」という点に関するものだ。
>一国の財政運営が行き詰まり、万策尽きた後の最後の手段としては大別して、
>「対外デフォルト」と「対内デフォルト」がある
>対外デフォルトの実態や顛末は、
>欧州債務危機時のギリシャの事例等があることもあり、比較的よく知られている。

>他方、対内デフォルトにおける国内債務調整とは、
>債務調整の負担のすべてを自国内で、自国民が被らざるを得なくなった場合に行われる。
>これは国民に対する極端な増税や、
>政府が支払いを約束していた歳出を突然カットする等の形で実施されることもある。
>併せて預金封鎖や通貨交換が実施されることも多い。

>第2次世界大戦の敗戦国であったドイツおよびオーストリア、
>そしてわが国における財政破綻は、まさにこうした国内債務調整の典型例であった。
>わが国においては1945年8月の終戦後、
>戦費で急膨張していた財政運営は完全に行き詰まり、
>翌46年2月にまず、預金封鎖が、国民にとっては突然の形で実施され、
>財政資金の大幅な不足を埋めるべく、国民の課税資産が先に差し押さえられた。
>同時に新円切り替えも実施され、いわゆる“タンス預金”による抜け道も完全にふさがれた。
>そして半年以上が経過した同年11月、
>政府は国民から幅広く「財産税」を徴収することを決定し、
>その支払いには封鎖預金も充当された。

>「日本はもっと借金しろ」そんなMMT理論の危険な落とし穴
>河村小百合(日本銀行入行 91年日本総合研究所入社 主席研究員)