茨城県常陸大宮市と宮城県蔵王町。直線距離で南北に170キロ以上離れた両市町が2月5日、友好都市協定を結んだ。
きっかけは、東京五輪・パラリンピックでともに南太平洋の島国であるパラオ共和国のホストタウンとなったことだ。
先の大戦で、パラオのペリリュー島では水戸歩兵第二連隊が中心の守備隊が米軍と交戦し、約1万人が戦死。
うち75人が常陸大宮市出身で、戦後に遺族が慰霊訪問を始めてから市がパラオへ消防車や救急車、野球用具などを贈るといった交流が生まれた。
一方、蔵王町には戦前、日本の統治下にあったパラオのコロール島でパイナップルを栽培し、戦後に引き揚げてきた邦人32世帯約80人が農地開拓のため入植。
心のふるさとを忘れないよう集落名を「北のパラオ」を意味する「北原尾(きたはらお)」と名付けたという深いつながりがあった。
こうした経緯から東京五輪・パラリンピックでは相次いでパラオのホストタウンに名乗りを上げた両市町は協力関係を構築。
令和元年10月、台風19号で大きな被害を受けた常陸大宮市へ蔵王町が支援も行った。
今回の友好都市締結は、五輪終了後も引き続きパラオとの友好を深めるとともに両市町間で災害発生時の相互支援や、人的交流などを進めていくためだ。
協定締結後、常陸大宮市の鈴木定幸市長は「人と人とのつながりを大切にし、両市町の将来を担う人材育成のため、子供たちの交流を」と要望。
蔵王町の村上英人町長はさっそく「常陸大宮市の子供たちにこちらでスキーを楽しんでもらいたい」と提案した。
ともに戦争という不幸な歴史も経験したうえで、ゆかりの深いパラオとの交流を通じて両市町は出会った。
不思議な縁で結ばれた友好都市関係の今後の発展に期待したい。