復興「いい絵ができている」 達増岩手知事インタビュー―東日本大震災10年
2013年4月、カリフォルニア州最北端の港町に、フジツボと泥で覆われた船が流れ着いた。船は2年以上かけて米西海岸に漂着した岩手県立高田高校の実習船「かもめ」と判明。地元のデルノーテ高校の生徒たちによって清掃され、同年10月に陸前高田に返還された。
両市はこれをきっかけに交流を始め、18年に姉妹都市協定を結んだ。クレセントシティを抱えるデルノーテ郡議会のクリス・ハワード議長(50)は、ビジネスや文化などの面で「想像を超える関係が育まれた」と指摘。「『かもめ』が運んできた希望を共有し、永続的な友情を構築したい」と語る。
交流に刺激を受けた地元企業の一つが、創業100年のルミアーノ・チーズ社だ。同社は友好を象徴する商品開発を進め、少量の塩から製造できるハードチーズに着目。岩手原産の塩を材料に、数々の受賞歴を誇る同社伝統の技をつぎ込んだ「KAMOME」を完成させた。
ただ、陸前高田では塩がつくられていなかったため、使われたのは岩手県野田村産。友好から生まれたチーズは、陸前高田産の塩でつくってほしい―。ルミアーノ社の努力に呼応する活動が、今度は陸前高田で浮上した。
動いたのは、震災後に愛知県から陸前高田に移り住んだ坪井奈穂美さん。まきストーブで地元の海水から塩をつくるプロジェクトを開始し、クラウドファンディングで約66万円を調達して昨年12月までに約11キロをクレセントシティに送った。
ルミアーノ社は、10カ月以上かけてチーズをつくり、今年の年末商戦で売り出す計画だ。この塩から約1000キロのチーズを製造できるといい、3代目オーナーのベアード・ルミアーノ社長(70)は「得られた資金はすべて両市の高校(の交流)に使ってもらう。1万ドル(105万円)程度になると思う」と話す。
ルミアーノ社長は「(米国の塩と比べ)日本の塩は風味が良い。熟成によって甘味が出る」と出来上がりに期待を寄せている。(クレセントシティ=米カリフォルニア州=時事)。
時事通信 2021年02月22日07時19分
https://www.jiji.com/jc/article?k=2021022100181&g=soc