政府が昨夏から今年1月にかけて実施した入国制限の緩和で、来日した外国人のうち技能実習生と留学生が7割超に上ることが、出入国在留管理庁(入管)の資料で分かった。新型コロナウイルスの流行前に4割を占めた短期出張などは5%台に縮小した。入国緩和は企業の出張などを連想させる「ビジネス往来」の再開として知られたが、実態は事実上の低賃金労働者といわれる実習生らが入国者の大半を占めている。(山田晃史)

◆例外的に「ビジネス上必要な人材等」限る
 政府はコロナの感染拡大に伴い、昨年2月から入国に制限をかけ始めた。いったん感染が落ち着いた6月に新型コロナの対策本部会議で、「ビジネス上必要な人材等」に限り例外的に入国を認める方針を決めた。夏以降に段階的に緩和し、感染が再拡大した今年1月21日まで続けた。
 入管は昨年8月〜今年1月に入国緩和で来日した人数を週ごとに公表している。本紙が集計したところ全体で14万7083人のうち、企業の出張など主にビジネス目的の「短期滞在」は5.6%(8216人)にとどまった。最多は技能実習の43.2%(6万3484人)で、留学は28.9%(4万2531人)を占めた。
◆70万人の技能実習生、留学生が低賃金で支える
 入国の中心となった技能実習生と留学生は現在、日本で約70万人が働く。彼らが低賃金で長時間働くことで成り立っている企業は多く、政府が経済界の求めに応じて入国を続けやすい環境を整えたとみられる。
 コロナ前だった2019年の入国と比べると、違いは鮮明だ。緩和の対象にならない観光を除いた割合をみると、19年は短期滞在が42%で、技能実習が4%、留学が8.8%。リモートの活用で出張が減る一方で、実習生らの入国は平時とほぼ変わらず続いた。
 本来、実習生は技術を学び母国で役立てるのが目的で、留学生も教育のため来日している。いずれも就労を目的とした在留資格ではない。しかし菅義偉首相は国会で、実習生を含んだ入国緩和の対象者を「ビジネス関係者」と説明。留学生は10月になってから、緩和の対象に追加されている。
◆場当たり的な労働力の確保政策
 外国人労働者の問題に詳しい指宿昭一弁護士は「そもそも実習生や留学生が入国する目的は『ビジネス』ではない」と強調。その上で「入国緩和は彼らを事実上の労働力として確保する場当たり的政策だ」と指摘している。

東京新聞 2021年02月24日 06時00分
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