コロナよりも怖い日本人の「正義中毒」 和田秀樹×中野信子が解説


新型コロナウイルスとの闘いが始まって、1年あまり。
「新しい生活様式」のなかで自粛警察が横行するなど、この間に、日本が抱える問題点が浮き彫りになってきた。

精神科医の和田秀樹氏と脳科学者の中野信子氏が分析する。


和田:新型コロナウイルスは、日本やアジアではインフルエンザと大して変わらないんですよ。
日本でのインフルエンザでの死者数は、年に約1万人(注1)ですから。

中野:コロナで怖く感じたのは、むしろ営業を継続する店への嫌がらせとか、
ちょっと出かけただけでバッシングするとか。そういう人間の行動です。
本人は強い正義感でやっているつもりでしょうが、他人を攻撃することでドーパミンが放出され、
快楽にはまってしまうんです。私はそれを「正義中毒」と呼んでいます。

和田:飲食店がどういう対策を取っているかが重要なのに、形式的に開けているか開けていないかで、悪いか良いかを決めて、叩く。

中野:日本人は「スパイト行動(注2)」を取りがちだという実験結果が出ています。
自分以外の人間が得をしているのを見ると、許せないという気持ちが強い。そのため、皆が我慢をしているときに得をしている人がいると、
その人を激しい攻撃対象にしてしまうんです。攻撃のターゲットにならないように、皆、より強く我慢を強いられます。
マスクにしても、「自分はルールを遵守する人間ですよ」という象徴。ルールに従う人、従わない人を峻別する装置です。

和田:日本人は、ルールは絶対に守らないといけないという強迫観念が強い。
そしていったん決まったルールを変えるのは、とても苦手なんです。


(注1)インフルエンザによる直接死と、原疾患が悪化して死んだ間接死を合わせたインフルエンザ超過死亡の推計。

(注2)たとえ自分が損をしてでも、他人が得をしないように足を引っ張る行為。


和田秀樹(わだ・ひでき)/1960年、大阪府生まれ。東京大学医学部卒業後、同大学附属病院精神神経科、
老人科、神経内科で研修。現在は国際医療福祉大学赤坂心理学科教授、和田秀樹こころと体のクリニック院長などを務める。

心理学や受験指導に関する書籍を多数執筆。今月、『孤独と上手につきあう9つの習慣』が文庫化予定。
https://dot.asahi.com/wa/2021040700009.html?page=1