週刊ポスト2021.04.10 07:00
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この春、小学校に入学した娘をもつ父親が、学校の校庭を見て、あることに気づいた。

「自分も通った小学校ですが、ブランコやシーソーがなくなっているんです。近隣の他の小学校も、通りすがりに覗いてみたら、やっぱりない。なぜ撤去したのでしょうか」(都内在住40代男性)

小学校の校庭にあった遊具が、いつのまにか消えたというのだ。

日本スポーツ振興センターの調査(令和2年)によると、全国の小学校(2万613校)における遊具の設置率(※同調査の推定設置数から算出)はブランコが約76%、滑り台は67%、シーソーは21%だという。大都市に限ると、ブランコ39%、滑り台49%、シーソー13%にまで下がる。

なぜ消えているのか。長年、現場教員の育成に携わってきた教育評論家の石川幸夫氏が解説する。

「体育の授業で使う鉄棒やうんていは残ったが、ブランコなど遊びの要素が強いものはどんどん減っている。事故が起きると親からクレームが入って教員の負担が増えるようになり、30年ほど前から少しずつ、教育委員会や学校長の判断で撤去する流れになっています」

現実にブランコやシーソーなど校庭遊具での事故は多く、訴訟にまで発展したケースも多々ある。

2011年7月に神奈川県茅ヶ崎市の小学校で、当時小2の男児が校庭の遊具から落ちて重傷を負う事故が起き、市は2017年に和解金2000万円の支払いと遊具撤去を条件に男児側と和解している。

消えたモノは遊具だけではない。理科の授業で使うアルコールランプやマッチも消えた。千葉県の小学校教員で、教員向けの著書などが多数ある城ヶ崎滋雄氏はこう話す。

「火事ややけどの危険があるからです。アルコールランプは倒すと燃料がこぼれて燃え広がるので、以前から危ないと思っていた。新しい教科書ではコンロを使うようになり、マッチも不要になりました」

1990年には、東京都立川市の小学校で小6女児が理科の実験中、同級生の持っていたアルコールランプから衣服に引火して大やけどをする事故が発生。損害賠償請求に発展し、02年に市と元同級生の両親が3600万円を支払うことで和解した例もある。

※週刊ポスト2021年4月16・23日号