福岡市とその周辺自治体にある7カ所の基幹病院は、輪番制で毎日夕方までにコロナ病床を2床ずつ空けておく独自の運用を始めた。感染者が急増した大型連休あたりから、通報を受けた救急隊が搬送先をすぐに見つけられない「救急搬送困難事案」が相次いだためだ。
この運用では、7病院のうち当番となる4病院が、回復した患者を周辺の病院に移すなどして各2床を確保する。「第4波」で拡大した変異ウイルスは感染力が強く、重症化のリスクも高いとされる。こうしたシフトを敷くことで、すぐに処置が必要な患者の迅速な受け入れにつなげたい考えだ。基幹病院の一つ、福岡赤十字病院(福岡市南区)の中房祐司院長は「救急車がどこにも行けないのは非常に危険。できるだけ回避したい」と話す。
福岡県によると、25日時点でコロナ病床は県内に1298床あり、うち重症病床は172床。県が病院長らに病床増を求めた4月16日時点から1・6倍に増えたが、病床使用率は今月25日時点で73%。福岡赤十字病院によると、福岡地区に限れば26日時点で85%に上る。
救急隊が到着後、1時間40分にわたり待機
総務省消防庁によると、新型コロナに伴う救急搬送困難事案は福岡市消防局で4月下旬から急増し、5月3〜9日は47件あった。同消防局によると、5月1〜9日は福岡市から北九州市までコロナ患者を搬送した事例が少なくとも9件あった。救急隊が自宅療養中の患者のもとに到着してから、1時間40分にわたって待機を余儀なくされたこともあったという。
医療関係者がとくに危機感を強めるのは、重症病床の逼迫(ひっぱく)だ。福岡県内の新規感染者数は12日に過去最多の634人を記録して以降少しずつ減っているが、重症者は新規感染者より遅れて増える傾向にある。
福岡赤十字病院も県の要請を受け、6月から重症病床を2床から4床に増やす。このため救急病床を減らし、17人の看護師をコロナ病棟にあてる。そんな中でも通常の診療は維持しなければいけない。中房院長は「重症化すれば1カ月ほどは治療が続く。重症患者の搬送先がなくなれば、命の選別も現実のものとなる」と語る。
病院「ものすごいジレンマを感じている」
通常の医療への影響が出始め…(以下有料版で,残り562文字)
朝日新聞 2021年5月27日 7時30分
https://www.asahi.com/articles/ASP5V6WKSP5TTIPE00T.html