日刊ゲンダイ
公開日:2021/09/07 06:00
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/life/294356/3

 現役高校教師が漫画の出版を巡り、東京都と裁判沙汰となっている。提訴したのは都立高で倫理を教えている公民科の男性教員(33)。この教員は2019年末に次男が誕生して同年度末まで育児休暇を取得。その様子を漫画にして「パパ頭」という名義でツイッターなどで発表していた。

「小さい頃から絵が好きで、漫画は趣味として描いてきました。大学時代には漫画研究会にも所属し、妻ともそこで知り合いました。発表した育児漫画が評価されるとうれしかったですね」(パパ頭さん)

 すると、複数の出版社から書籍化の打診が舞い込み、男性の育児参加の考え方について、ある編集者と共感。その編集者が働く出版社から、20年度内をめどに書籍を出版することになった。

 勤務時間外に漫画を加筆することになったが、公務員の兼業(副業)許可は厳しく、任命権者(東京都教育委員会)の許可を得る手続きが必要。パパ頭さんは勤務先の校長に相談の上、校長の意見を添えた兼業許可申請書を都教委に上げることができた。だが後日、校長から不許可を告げられる。

理由を聞いても曖昧な返答しかもらえない。

 悩んだ末にパパ頭さんは、不許可の理由や兼業許可の基準を知ろうと、不許可処分の取り消しと印税60万円を含む160万円の損害賠償を求めて今年5月、裁判を起こした。

 原告代理人の船戸暖弁護士は「兼業は職業選択の自由のひとつ。男性の育児参加という社会課題は公民科教員の本務にかなう。都教委は漫画という表現方法を問題にしているのかもしれないが、今や漫画は非常に有効な手段」と話す。

■両者の言い分は真っ向から対立

 一方、都教委側は「教育公務員特例法17条にいう『教育に関する他の事業若しくは事務』に当たらない」とし、両者は真っ向から対立している。

 都教委の事務局である教育庁の人事部職員課服務担当によれば、都立学校教員の兼業は19年に1200件程度認められている。

「主なものは例年同じで、教科書執筆、講演会講師、賃貸不動産管理の3つ。許可、不許可は学校経営支援センターが判断している」(服務担当)

 パパ頭さんの裁判支援のためクラウドファンディングも立ち上がり、231人から約82万円もの金が集まっている。支援者からは「国立大学教員ですが、副業規定の曖昧さや不文律には不満しかありません。応援しています」「私も教員です。働き方の多様性を広げるために大変意義のある訴訟であると感じました」などの熱いコメントが寄せられている。

 国も育休取得や副業を奨励する時代。全国の公務員が注目する裁判の結末はいかに。

「パパ頭」さんの漫画から(提供写真)
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