もし今、米国で新型コロナウイルスに感染した場合、それはオミクロン株である可能性が高い。
米疾病対策センター(CDC)によると、1月8日までの1週間に米国内で遺伝子解析された症例の98%以上がオミクロン株によるものだった。

元のウイルスと比べて変異の多いオミクロン株は、これまでの主流だったデルタ株とは大きく異なるため、
過去2年間で身につけたリスク管理のやり方を部分的に変える必要があるかもしれない。

オミクロン株は感染力が強くなっているだけでなく、既存の抗体から逃避する能力も優れている。

「最も大きくて衝撃的な変化は、感染力が信じられないほど強くなっていることです。これほど感染力の強いウイルスは見たことがありません」と、
米エモリー大学の疫学者で感染症専門医のカルロス・デル・リオ氏は言う。

一方で、オミクロン株による症状は他の変異株とは異なっていて、重症化する例は減っているようだ。

それでも、すべての新型コロナウイルスには重要な共通点があり、「ワクチン接種を受けてマスクを着用する」
という基本的な感染予防策は変わらない。以下では、オミクロン株が主流になった現在の感染対策について、最新の研究から得られた知見を紹介する。


オミクロン株に感染した18歳以上の米国人では、感染が判明してから3日以内に救急外来の受診、入院、人工呼吸器の装着に至る割合が、
いずれもデルタ株の半分以下だった。これは米ケース・ウェスタン・リザーブ大学医学大学院の研究者が調査した結果で、
論文は査読前の医学論文を投稿するサイト「medRxiv」に2022年1月2日付けで公開された。

1万4000人以上の患者のデータが調査され、ワクチン接種や基礎疾患の有無も考慮されている。

他の変異株との症状の違いが、こうした重症化率の変化をもたらしていると、デル・リオ氏は述べる。
オミクロン株では、肺炎のような症状や免疫系の暴走が見られる患者は減り、鼻づまりや喉の痛みを訴える患者が増えている。

「オミクロン株の症状は比較的、鼻風邪に似ています」と氏は言う。

先に紹介したケース・ウェスタン・リザーブ大学の研究によると、65歳以上の高齢者やワクチン接種を受けられない年齢の子どもを含め、
すべての年齢層でオミクロン株はデルタ株に比べて重症化しにくいようだ。

それでも、他の健康問題と同様、年齢が重症化の要因の1つであることに変わりはないとデル・リオ氏は言う。
「どんな病気でも、高齢になるほど悪化しやすくなります」

基礎疾患のある人や免疫力が低下している人も、ワクチン未接種の人と同様に感染しやすい。現行のワクチンがオミクロン株による症状を防ぐ効果は、デルタ株に比べて低い。

だが英HSAの報告によれば、ブースター接種(追加接種)を終えた人は、未接種の人に比べてオミクロン株感染による入院率が88%も低いことがわかっている。

英国各地の病院からの報告では、現在、集中治療室に入っている人の大半がワクチン未接種の人だという。

デンマークで行われた家庭内感染の研究によると、オミクロン株はデルタ株の2〜4倍うつりやすいという。
なお、論文はまだ査読を受けておらず、2021年12月27日付けで「medRxiv」で公開された。

また、ワクチン接種による抗体を逃れやすく、ブレイクスルー感染を引き起こしやすい。
その結果、体調不良で来院する人も、病欠の連絡をしてくる病院スタッフも増えているとデル・リオ氏は言う。


オミクロン株でも後遺症が残るおそれはある?


まだわからない。オミクロン株が長期的に持続する症状を引き起こすかどうかが明らかになるのは数カ月後になるだろう。
しかし、ワイリー氏をはじめとする一部の専門家は、オミクロン株が肺に感染しにくい傾向があるうえ、
ワクチン接種を受けた人が増えていることで感染や発症のリスクが下がっているため、新型コロナ後遺症に苦しむ人は少なくなるのではないかと考えている。
https://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/21/011400643/?P=1