生活保護の申請をした人の親族に申請者への援助が可能かどうかを問い合わせる「扶養照会」を巡り、援助を期待できない場合、親族への問い合わせを不要とした昨年3月の厚生労働省の通知が首都圏の1都3県の自治体が発行する「生活保護のしおり」の9割超で記載されていないことが、超党派の地方議員らの調査で分かった。(中村真暁)

 立憲民主党の石橋通宏参院議員(比例)や同党の小椋修平・足立区議、一般社団法人「つくろい東京ファンド」の小林美穂子さんらが21日、東京・永田町の参院議員会館で記者会見し、首都圏の地方議員や大学生らで行った「生活保護のしおり書きっぷり調査」の結果を発表した。
 調査は昨年9〜12月に実施。東京、神奈川、千葉、埼玉の1都3県で、福祉事務所がある全157自治体から「生活保護のしおり」を入手し、扶養照会の説明内容を精査した。
 厚労省は昨年3月、生活保護申請者が親族と縁を切っていたり、相続の問題で対立していたりして「扶養が期待できない場合」は、問い合わせの手続きが省略できると自治体に通知。DVや虐待があった場合は行わないように求めた。

 扶養照会は「援助が期待できる人」に行うよう求めた内容だが、しおりに記していたのは全体の3.8%(東京3・7%、神奈川10.0%、千葉4.8%、埼玉0.0%)。暴力や虐待を受けた場合に通知しないと記していたのは、28.7%(東京14.8%、神奈川45.0%、千葉31.0%、埼玉36.6%)だった。
 申請者の意向に反した扶養照会は、当事者が生活保護の利用をためらう要因となっている。小椋区議は記者会見で「扶養照会を巡る現場の運用は改善していない」と述べた。

東京新聞 2022年1月22日 06時00分
https://www.tokyo-np.co.jp/article/155600