一度も陽性結果は出ていないが「私は感染している」


英ジャーナリストのローズ・ジョージは、今年1月に「新型コロナと思しき症状」が現れるまでは、週に48km以上走り、
その他にもヨガやウェイトトレーニング、サイクリングなどを行っていた。

普通の人よりも日常的に運動していたため、「安静時の心拍数は低く、52歳の女性にしてはかなりの健康体だった」。
しかし、今年1月に喉の痛みや咳、インフルエンザのような症状が現れた。

以来、3ヵ月以上が経ったいまも「ロング・コビット」こと、長期不調に悩まされていると英紙「ガーディアン」に寄稿している。

一般的に「ロング・コビット」は新型コロナの後遺症を表す言葉として使われているが、彼女のように、テストを受けても
「陽性反応は出ないが、数ヵ月以上にわたって症状が出続けている」と訴える人は「少なくない」という。

実際、アメリカのヘルスメディア「カイザー・ヘルス・ニュース」も、同氏と同じように「ロング・コビット」に苦しむ人々を取り上げている。

二人の子供を持つ33歳の母親クリスティン・ノボトミーは、昨年8月頃に、倦怠感や息切れ、筋肉や関節の痛みなどの症状が出て以来、
「テスト結果は陰性であるにもかかわらず、7ヵ月以上経っても一向に体力が回復しない」と、語っている。

「以前は、定期的にクロスフィット・トレーニングを行ったり、息子たちとサッカーをしたりしていた。平日は地元の中学校の食堂で働き、アクティブな生活を送っていた」。
だが、以前のように子供と一緒に遊べなくなった。仕事も夏休み明けに1日だけ復帰したが、とても立っていられず、いまも休職している。

これまで、テストの結果が陽性だった人々に対しては、さまざまな調査や研究が行われてきた。一方で、陰性の人々の研究はほとんど行われておらず、
彼女たちのように、新型コロナウイルスが体内に潜伏している可能性があるがテストの結果は陰性という「“偽”陰性の人のデータは非常に限られている」と、同メディアは書く。

医師のなかには「陽性ではないのだから、新型コロナとは無関係だ」と見なしてきた者も少なくないと述べている。

そのため一体、何が「ロング・コビット」を引き起こしているのか、どのくらい続くのか、また、なぜ一部の人がこのような症状を示し、
他の人は数週間または数日で回復するのかについては、まだ誰もわかっていないのが現状だ。

よって、彼女たちのような「ロング・コビット」患者は、「治療にも傷病手当金(障害の場合に支払われる給付金)にもアクセスできずにいる」。


「さまざまな理由から、新型コロナウイルスが体内に潜伏していても陽性結果が出ない人がいる」と、米インディアナ大学医学部のナタリー・ランバート准教授は、同メディアに語っている。

その理由のひとつが「検査を受けるタイミング。これは、SARS-CoV-2を正確に検出する上で最も曖昧な要素のひとつ。
同ウイルスへの曝露後、体にすぐに症状が現れることはない。ウイルスが増殖するまでには時間がかかり、症状が現れるまでには多くの場合4-5日かかる傾向がある。

なかには14日以上かかるケースも確認されている」と、臨床微生物学の専門家ボビー・プリットは述べている。

その潜伏期間中にテストを受けても、ウイルスは検出されず結果は陰性になる可能性がある。

また、潜伏期間が過ぎてウイルスが体外に出た場合も、体の中では免疫応答が起こっており、
そのため息切れや倦怠感などの「症状があることも珍しくない」。場合によっては、体内の防御システムが自身の健康な組織を攻撃し「症状が悪化することもある」。

後遺症が起きる理由については未解明な部分が多いが、同メディアによれば、こういった自己免疫反応により、臓器自体がダメージを受けたり、
心臓や脳など炎症が起こる場所によっては動悸やブレイン・フォグ(集中力や記憶力の低下など)が起きたりといったことがある。

これらは「後遺症」の大きな要因の可能性として見られているが、要因は他にもある。そのひとつには「臓器に少量のウイルスが隠れている可能性」もある。

前述のジャーナリストは、「私の場合は、ウイルスが腸に潜伏している可能性と、マスト細胞が炎症を起こしている可能性がある」と、書いている。
https://courrier.jp/news/archives/287441/#:~:text=%E3%83%AF%E3%82%AF%E3%83%81%E3%83%B3